『トーキョー・ナイトメア リプレイ1 ブラックダイヤモンド』第1話特別掲載。

◆Opening03◆黄昏にく花
  シーンプレイヤー:たちばなエリカ
  シーンタロット:イヌ

 
 トーキョー都内のうららかな昼下がり。
 ショルダーバッグを引っさげた、若い女性が歩いてくる。
 夜のにおいを漂わせつつも、どこか明るい雰囲気の橘エリカは人々の目をく女性だ。そんな彼女が、裏の仕事をしているとは、誰も思わないだろう。
 エリカが訪れたのは、アンティークな調度品が並ぶ喫茶店きつさてんだった。

 
RL:では、次のシーンに移ります。シーンカードはイヌ。シーンプレイヤーはエリカです。
エリカ:あたしかー。
RL:エリカのオープニングは、アマンダ・アインスブルクから依頼を受けるシーンになります。トーキョーのどこかでアマンダと落ち合うことにしますが、場所の希望はありますか?
エリカ:じゃあ、昼間のカフェにしましょ。コーヒー一杯いつぱいで千円するような高い店!(笑)
RL:では、銀座とか白金あたりにありそうな、ホテルラウンジのような喫茶店にしましょう。落ち着いた雰囲気の店内には、アンティークな調度品がかざってあって、本格的なサイフォン式のコーヒーや初摘はつづみ紅茶が楽しめるお店にしましょう。
エリカ:いいわねー。そうそう、そういう雰囲気よ。
テツヤ:俺とはえらい差だ。
唐巣:“黄昏の時代”が生んだ格差ですね。
 
 時代のせいではないと思う。
 
エリカ:となりのボックスの声が聞こえないような、本格的な談話室がある感じにしてほしい。他の席では、セレブな奥様おくさまとかが話に花をかせているような。
RL:わざわざこの時代にレコードで音楽を流すとか、店主のこだわりがある雰囲気のお店ということで。
エリカ:きっと渋いジャズかブルースね。あたしは、もっとにぎやかなのが好きだけど。
テツヤ:なかなかないだろうな、そういう店。
エリカ:だから、いいのよ。
RL:では、エリカが店で待っていると、アマンダがやってきて向かいに座ります。「お待たせしたわね」
エリカ:ううん、あたしも今来たところ。
RL:アマンダはエリカの向かいに座り、慣れた様子でコーヒーを飲みます。
エリカ:アマンダはこの店のお得意様よね、きっと。
RL:ですね。この席も店主がわざわざ開けておいてくれているようです。
エリカ:さすがね。それで「例のお仕事なんでしょう、アマンダさん」とうれしそうに言う。
唐巣:嬉しそうなんですか。
エリカ:だって、お金もらえるし。
RL:すると、すっと写真がわたされます。「次は、彼女の周囲で事件が起こるはずよ。番号が出てきたから」
エリカ:番号……ああ、IDのことね。
RL:「彼女のプロフィールはこちらに」とデータチップを渡します。都内でひとり暮らしをしている高校生、土岐野ユウカという少女です。
エリカ:ふーん、ひとり暮らしなの?
RL:さっきのシーンでも伝えましたが、親類が引き取った後、都内の進学校に通っているため、通学の都合上ひとり暮らしをしているようです。
エリカ:なるほどね。
RL:「彼女の周辺で何らかの事件が起きるのは間違いないわ。それを未然に防いでほしいの」
エリカ:ふーん。わかった。この人の周りを張ってればいいのね。……で、この娘が何かやらかすの?
RL:「それはまだわからないわ」
エリカ:じゃあ、この娘がおそわれたりするんだ?
RL:「それもまだわからないわ」
 
 事件が起こることはわかっていても、それが何の事件なのかは、わからない。
 名を告げられた相手は、必ず事件の中心にいる。
 しかし、どのような形で関わっているのかを告げられることはない。
 アマンダからの依頼は、いつもこんな調子だ。

 
エリカ:いつも不思議なんだけどさ。どうして、あなたはその娘の周りで事件が起きるってわかるの?
RL:「それは聞かない約束よ。もちろん、その分、報酬をはずむのもいつも通り」そう言って、アマンダは報酬点を5点出します。
テツヤ:俺がもらった報酬点の5倍だ……(笑)。
エリカ:ふふん♪ 人助けしてお金がもらえるなら、問題ないわよ。仕事はちゃんとするから。言えない事情の分、お金いっぱいもらえるんだから別に知らなくてもいいし。データチップはバッグにしまう。
RL:では、アマンダは「それじゃ、よろしくね」と依頼を受けたのを確認しました。
唐巣:何か訳ありな依頼のようですが。
エリカ:その辺は気にしない。じゃ、スマホのスケジュールアプリを確認して、あんまり乗り気じゃなかった夜遊びはキャンセルしておくわ。前から楽しくない連中は、この辺で切っちゃう。
RL:なかなかドライな人間関係ですね。
エリカ:めんどい関係を作らないってのが、楽しく遊んで生きるコツだから。
唐巣:なるほど。
テツヤ:それも生き方というやつだな。
エリカ:これはこれで苦労もあるんだけどねー。
テツヤ:そういうものなのか。
RL:このシーンをおさらいすると、エリカは謎の依頼人いらいにんアマンダから土岐野ユウカという女子高生の周囲で事件が起こるので監視かんしを依頼されました。
エリカ:大丈夫、ちゃんと覚えたわ。
RL:エリカにキーワード【土岐野ユウカ】を差し上げます。シーン終了とします。