『トーキョー・ナイトメア リプレイ1 ブラックダイヤモンド』第1話特別掲載。

◆Opening04◆情報処理官、唐巣サブロー
  シーンプレイヤー:唐巣サブロー
  シーンタロット:マヤカシ

 
 ――内閣情報調査室の情報処理部門は都市伝説である。問い合わせても、「そのような部署は存在しない」という答えが返ってくるだけだ。
 単独で任務を遂行する情報処理官が、表沙汰にならぬよう適切に“処理”しているのだ。
 唐巣サブローも、そのひとりである。

 
RL:次のシーン、シーンタロットはマヤカシ。シーンプレイヤーは唐巣サブロー。場所は、内閣情報調査室のオフィスとなります。唐巣は、上官に呼び出されるシーンです。
唐巣:はい。
エリカ:現実の内閣情報調査室って、総理大臣に情報を報告するための部署よね。
RL:安全保障や治安、経済に関わる内外の情報を集め、分析ぶんせき報告するという役割を持っています。収集した情報に対して、何かをするという部署は存在しないようです。ただ、『TNM』の世界では、非合法活動も厭わない情報処理官が活動していることになっています。
唐巣:その情報処理官のひとりが私でしてね。どういう活動しているかは秘密ですが。
 
 唐巣サブローはこれといって特徴とくちようのない人物だ。
 それは諜報ちようほうの世界では、大きな利点となる。
 どこでも目立たず、誰の記憶きおくにも残らず行動する。
 公にできない非合法活動も行なう情報処理官として、これほど役に立つことはない。

 
RL:そんな唐巣に上官の内閣情報官からの呼び出しがあったわけです。
唐巣:では、デスクで待っている上官の前に現われましょう。「お呼びでしょうか」
RL:デスクには、矢田やたケイスケ内閣情報官が待っています。
 
矢田ケイスケ
 内閣諜報調査室を統括とうかつする若き内閣情報官。唐巣サブローの上官となる。大物政治家の庶子しよしであるが、出向先の世界の情報機関をわたあるいた人物である。

 
RL:矢田ケイスケは「君に調べていただきたい件があります」と用意した資料を渡します。
唐巣:“黄昏の亡霊”ですか?
RL:「ええ。七年前に起きた“黄昏の亡霊事件”についてです。実行犯の“黄昏の亡霊”こと東誠一が、先日都内で行なわれた街頭演説の場に姿を現わした、とのことです」
唐巣:由々しき事態ですね。
RL:「テロリストが公の場に姿を見せたというのは、治安維持の観点からしても重大な危機です」
唐巣:もちろんです。街頭演説の場とおっしゃっていましたが、例の新人候補の増田志郎ですか。
RL:「はい、NBIもつかめていないようです」
唐巣:NBIの捜査そうさ能力をも上回る相手なのかもしれない、と。
RL:「七年間、NBIの全国捜査にも引っかかっていない相手ですからね」と顔写真を渡します。
唐巣:指名手配されているので、顔写真は簡単に手に入るわけですね。
R:「ただ、“黄昏の亡霊事件”は、時効まで残り半年ほどなのです」
唐巣:わざわざ時効目前のタイミングで姿を現わすのはおかしいですね……。何らかの目的があると判断していいでしょう。
RL:「だからこそ、君に調べてもらいたい」
 
 時効成立前に指名手配犯が公に姿を現わすというのは、高いリスクを冒すことになる。
 七年間潜伏せんぷくし、後半年が過ぎれば警察から追われることもなくなるなら、なおのことだ。
 亡霊は、何故トーキョーに姿を見せたのか?
 しかも、街頭演説という注目が集まる場に。
 何らかの目的と意図があるのは、間違いない。

 
唐巣:私は、七年間NBIの全国指名手配をくぐったテロリストを探ることになるわけですね。
RL:「そうなります。できますか?」
唐巣:もちろんです。警察のできない調査をするための我々です。
RL:その答えに納得したように「よろしくお願いします」と矢田さんは短く答えます。
唐巣:では、失礼します。室内なのに風がき、いつの間にか私の姿が消えているということで(笑)。
エリカ:かっこいい~♪
RL:〈元力:疾風エアリアル(正)〉の演出ですね。書類がバサバサッと音を立てますが、矢田ケイスケは静かに眼鏡をただしただけです。それでは、キーワード【“黄昏の亡霊”事件】を差し上げます。
唐巣:ふふふ。
RL:こうして唐巣サブローは、内調の情報処理官として、七年ぶり現われたテロリスト“黄昏の亡霊”を追うことになります。
唐巣:了解です。
RL:では、シーンを終了します。