●リサーチフェイズ
◆Research01◆不穏な気配
シーンプレイヤー:橘エリカ
シーンタロット:カブトワリ
橘エリカは、土岐野ユウカの周辺調査を開始した。
ごく普通の女子高生が下校し、帰宅するまでの行動を見守るという仕事である。
特に事件に巻き込まれるような娘ではないが……。
RL:このシーンから、リサーチフェイズとなります。リサーチフェイズでは、演出されたシーンに登場を望む場合は指定された〈社会〉や〈コネ〉で判定して登場することや、得たキーワードについての情報収集を行なうこともできます。
テツヤ:そのリサーチフェイズの最初のシーンは、がシーンプレイヤーになるんだ?
RL:シーンプレイヤーは、エリカです。シーンタロットはマヤカシ。依頼を受けた翌日、ユウカを監視しているところからのシーンです。
エリカ:はーい。
RL:エリカ以外のキャストは舞台裏にいることになりますが、登場判定に成功すれば登場できます。このシーンへの登場は、〈社会:ビジネス〉もしくは〈社会:ストリート〉で、目標値10の判定に成功すると登場できます。また、シーンに登場しているエリカやユウカの〈コネ〉でも判定できます。
『TNM』では、登場したいシーンがあれは指定された〈社会〉技能や〈コネ〉の判定に成功すれば、登場することができる。
これを登場判定という。
テツヤ:とりあえず様子を見よう。俺は、登場する気になったら登場判定するよ。
唐巣:私も様子見ですね。
RL:では、下校中のユウカを、エリカがそれとなく尾行をしているところです。
エリカ:じゃ、遠巻きに彼女のことを見ているけど、どうかしら?
RL:ユウカは友人と一緒に下校しますが、特に寄り道せずに帰るようです。
エリカ:へえ、真面目ねー。
RL:高校卒業後の進路を真剣に考えているんです。
エリカ:はあ、若い子が苦労しないで楽しく生きられる世の中になればいいのにねー。
RL:“黄昏の時代”はいろいろと大変ですので。
エリカ:それで、変わったことはないかしら?
RL:あなた以外に、ユウカの周囲を監視している者たちがいます。
エリカ:……“者たち”ってことは、複数?
RL:はい、体格のいい男がふたりでユウカを尾行しているようです。
エリカ:ユウカちゃん、尾行されてるの?
RL:はい。男たちは、「土岐野ユウカさんだね?」「少し話をしたい」と威圧的に声をかけます。
エリカ:あら、さっそく何か起こるわけね。アマンダさんの言うことはよく当たるわー。
RL:「な、なんですか、あなたたち?」と怯えるユウカに、男たちはさらに詰め寄ろうとします。「君のお父さんについてだ」
エリカ:そいつらを追っ払ってあげましょう。
RL:ほう、追っ払うんですか。
エリカ:そうよ、ここでユウカちゃんを助けてあげて、仲良くなりたい。監視も楽になるし。
RL:ああ、なるほど。このふたりの男はエキストラですので、エリカなら簡単に追っ払えます。
エキストラ
エキストラはデータを持たないNPCである。RLが望むなら、固定の達成値やアウトフィットのデータを持たせてもよいが、ここで登場している男たちには設定していない。
エリカなら、特に判定の必要なく倒したり追っ払ったりすることができる。
エリカ:なら、さっそくその背後から忍び寄って、ふたりの腕を捻り上げるわ。
RL:「ぎゃああああ~!」と男たちは、いともあっけなく腕を捻り上げられてしまいました。
エリカ:この人たち、あなたの跡をつけていたの。変なことされなかった?
RL:ユウカも「は、はい……」とびっくりして答えます。で、男たちは「この、放せ!」と抵抗します。彼らも武道はかじってるようです。
エリカ:じゃ、ペルソナをカタナに変えて言うわ。なんのつもりで女の子の跡なんかつけてたの?
RL:おっ、ペルソナがカタナに。では、その殺気が男たちにも伝わります。
エリカ:このまま、折っちゃってもいいのよ?
RL:「くっ……!」
遊び人風に思えたエリカが見せた、裏の顔。
腕を取られた男たちも、思わず気圧される。
男たちも多少武道の心得があるようだが、それとは違う危険な気配だった。
エリカ:押さえつける手の力を少し緩める。「あんたたち、誰? この娘にどんな用があったの?」
RL:〈社会:警察〉の判定に成功すると、情報が得られます。目標値は12です。
エリカ:こいつらからは聞き出せないの? 具体的には、<交渉>を使いたいの。
RL:なるほど。この状況ですし、<交渉>もよしとしましょう。
エリカ:【理性】が6、<誘惑>で+3、(カードを切って)クラブの7を出して、達成値16。
<誘惑>はマネキンが持つスタイル技能だ。
一般技能の<交渉>の達成値に+[レベル]する。
エリカは<誘惑>を3レベルで取得している。
エリカ:「今のうちなら、痛いのは少しで済むわよ?」っていう<誘惑>の演出するわ。
テツヤ:全然誘惑してないな(笑)。
RL:「そ、それは……」男たちは口を割りませんが、エリカの<誘惑>で油断したのか、社員証らしきものを落としてしまいます。
エリカ:じゃ、それを目ざとく見つけて身元を確認できるのね。
RL:はい。社員証は、旭鷲警備保障という会社のものです。
エリカ:警備会社なの? ああ、武道か何かやってるってのはそういうこと。
RL:ちなみに、先に言いますと、彼らはこれ以上の情報は話しません。
エリカ:何者かわかったんなら、もういいわ。ほら! とっとと、どっかに消えなさい。
RL:「くそ……!」ふたりの男は、そそくさと退散します。エリカには、キーワード【旭鷲警備保障】を渡しましょう。
エリカ:了解です。後で調べよう。
RL:その男たちが、離れた場所に停めてあった車に乗り込むと、車はすぐに発進して退場します。
エリカ:ただの尾行が目的じゃないってことね。まず、ペルソナをマネキンに戻すわ。「大丈夫? 怪我とかしてない? ……ちょっと、お節介すぎだったかしらね?」
テツヤ:実は、あいつら話かけただけだしな(笑)。
エリカ:えっ!? ユウカちゃんをさらおうとしてた悪いヤツじゃないの?
RL:彼女がおびえていたのは事実ですが、彼らは犯罪者ではないので……。
唐巣:犯罪者はエリカさんの方ですな(笑)。
エリカ:……。
RL:でも、ユウカはほっとしてます。
エリカ:よし! この隙に仲良くなるぞ!
RL:「お節介だなんて、そんなことないです。ありがとうございます。助かりました!」
エリカ:なら、よかったわ。
RL:「わたしは、土岐野ユウカと申します」
エリカ:あたし、橘エリカ。よろしくねー。
RL:「あの、さっきの武術みたいなのは……」
エリカ:ああ、あれね。あれはほら、ちょっとした護身術ってやつ? 最近、危ないし。
RL:「そうなんですか」
テツヤ:ペルソナをカタナに変えて、護身術とは。
エリカ:今時の女の子は強くないとね。あははー(乾いた笑い)。
RL:「強く、ですか?」
エリカ:それに、かわいい女の子つけ回すような男はちょっと許せなくてさ。この街には、いっぱい悪いヤツがいるから、気をつけてね。
RL:「はい、わかりました。気をつけます」
エリカ:そうだ、また何かあると困るだろうし、家まで送ってあげようか。
RL:「いいんですか? 何から何まで、ありがとうございます。では、お言葉に甘えて」
エリカ:気にしなくてもいいから。
RL:では、彼女が住んでいるマンションまで送り届けることができます。
エリカ:その間に、仲良くなっておくわ。ユウカちゃん真面目で素直そうだしね。
RL:彼女も助けてくれたお姉さんということで、すっかり信用しました。旭鷲警備保障の男たちからユウカを助けたということで、シーンを終了します。
* * *
RL:シーンが終了し、舞台裏の判定になります。リサーチフェイズでは、シーンに登場しなかったキャストは、最後に一回ずつ、その舞台裏で情報収集の判定が行なえます。では、登場しなかったテツヤと唐巣は情報収集の判定をどうぞ。
テツヤ:キーワード【土岐野貞秀】を調査したい。
RL:【土岐野貞秀】は、〈社会:警察〉か〈社会:メディア〉、もしくは〈社会:ストリート〉で、目標値15の判定に成功すると情報を得られます。
テツヤ:そっちのスートは合わないので、〈社会:トーキョー〉で調べよう。
〈社会:トーキョー〉は、トーキョーが舞台であるなら、〈社会:ビジネス〉〈社会:警察〉などの業界社会の代わりに使用できる。
舞台裏での判定は、演出は行なわない。
テツヤ:では、〈社会:トーキョー〉で判定。達成値19で成功。
RL:では、以下のことが判明します。
土岐野貞秀
土岐野ユウカの父親。七年前に失踪した。生きていれば、現在四二歳。
警備会社勤務。前職は警察官。失踪の3年ほど前に民間企業に転職した。転職の理由については不明。
全国指名手配された【“黄昏の亡霊”東誠一】とそっくりである。
RL:新たなキーワードとして、キーワード【民間企業への転職】【“黄昏の亡霊”東誠一】を得ます。
エリカ:思わず調べたくなるくらいに、土岐野と東誠一はそっくりなんだ?
RL:身内や捜査のプロが見れば、というくらいです。“黄昏の亡霊”が起こした事件は、かなり話題になった事件なので、その犯人とそっくりともなれば、ユウカも心配するわけです。
唐巣:どんな事件なんでしょうね。
RL:それは、キーワードを調べると判明します。
唐巣:では、さっそく【“黄昏の亡霊”事件】について調べましょう。
RL:〈社会:ストリート〉か〈社会:警察〉、〈社会:メディア〉で、目標値12となります。
唐巣:〈社会:メディア〉で判定。国家公務員証明書を使用して達成値プラス1、(カードを切る)ハートの9を出して、達成値は16。
“黄昏の亡霊”事件
七年前に発生した仮想通貨発掘サーバ爆破テロ事件。建物内にあるサーバだけが狙われ、爆破された。
仮想通貨の信用価値下落などを含めた損失額は数百億規模となり、黄昏の時代幕開けの象徴的な事件のひとつ。首謀者は【“黄昏の亡霊”東誠一】。事件名は、彼のあだ名からマスコミがつけたもの。
のちに反グローバル主義と反資本主義を掲げる【極東旅団反抗の狼】から、犯行を賞賛し、東を支持する声明が出された。
半年後に、公訴時効を迎える事件である。
RL:キーワード【極東旅団反抗の狼】【“黄昏の亡霊”東誠一】を得ます。
テツヤ:“極東旅団反抗の狼”……?
RL:テロリストグループです。くわしくは、情報収集をしてください。
テツヤ:なるほどな。
エリカ:爆破によって怪我人とか出てないの?
RL:人的被害は出ていません。サーバのみを狙って意図的に爆破したようです。
エリカ:建物に侵入して、わざわざサーバだけ爆破したってこと? そこまで苦労するんだから、まとめてふっ飛ばせばいいのに。テロリストなんだから。狙って限定的な被害にしてるってことよね?
唐巣:衝撃を与えたテロにしては、被害を出さないように気を遣ってるように思えますね。
RL:そういう特別な事件だったので、“黄昏の亡霊”と名づけられて報道されました。では、舞台裏を終了し、次のシーンに移ります。