◆Research02◆新宿の虎
シーンプレイヤー:日置鉄也
シーンタロット:エグゼク
テツヤは、ゴーストライダーを古巣であるNBI本部近くのカフェの前に停めた。
すっかりトーキョーの街にも定着したシアトル式カフェの店内には、客としてやってくる警官たちも多く見かける。
少しばかり、懐かしい気持ちになる。
RL:このシーンは、特にイベントを用意していませんが表舞台で情報収集ができます。プレイヤーからの希望はありますか?
テツヤ:なら俺がやっていいか?
エリカ:あたし、さっきシーンプレイヤーだったからテツヤの番でいいわよ。
唐巣:私もそれでかまいません。聞きたいことがあったら、登場したいですし。
RL:では、テツヤをシーンプレイヤーに指名しましょう。
テツヤ:ああ、助かる。
RL:シーンタロットはエグゼク。まずはどのようなシーンにしましょうか?
テツヤ:NBI機動捜査班の班長、大鷹アキラをカフェに呼び出す。俺は彼女の〈コネ〉を持っている。彼女は、昔の同僚だ。個人的にアキラに会って、話を聞いてみるとしよう。NBI時代の同僚だからな。
RL:なるほど。
テツヤ:NBI本部の近くにあるカフェに彼女を呼び出す。他のキャストも登場しやすいだろう。
RL:では、場所はNBI本部近くのカフェ。テツヤがバイクを降りて店内に入ると、何人か警官も客で入っていて、しばらくすると呼び出しに応じたアキラがやってきます。
テツヤ:ああ、席でアキラを待っている。
エリカ:大鷹アキラが呪文のように長い名前の甘いドリンクとか頼むのよ、きっと(笑)。
RL:「カフェラテ、ヘーゼルナッツにハチミツに、シナモンとチョコパウダー、ラージサイズでな」とか、そんな頼み方をします(笑)。
テツヤ:……相変わらず健啖家だな。
RL:そんなカフェラテをトレイに載せたアキラが「わざわざ呼び出しとか、何の用?」とテツヤの向かいの席につきます。
テツヤ:聞きたいことがあってな。ああ、その甘ったるそうなコーヒー代は俺が持とう。
RL:「ちょっと待った、奢られたら賄賂になっちゃうだろ。自分で払うさ。お前だって、現役の頃はそうだっただろ?」
唐巣:公務員ですからねえ。
テツヤ:悪いな、シャバの空気に慣れすぎたようだ。
RL:「それで? 何を聞きたい」というところで、情報収集の判定ですね。
テツヤ:今、俺が持っているキーワードは【“黄昏の亡霊”東誠一】と【民間企業への転職】だ。だから、古巣の関係者に聞くのがいいと判断した。
RL:どちらを調べますか?
テツヤ:【“黄昏の亡霊”東誠一】にしよう。
唐巣:おや、【“黄昏の亡霊”東誠一】については、私も調べたいと思っていたところなんですよ。登場判定をしたいです。
RL:〈社会:警察〉か〈社会:ビジネス〉、もしくはこのシーンにいる登場しているテツヤか大鷹アキラの〈コネ〉で判定できます。
唐巣:(カードを切る)〈社会:ビジネス〉で判定成功。私は、隣の席から話をうかがっていましょう。
テツヤ:“黄昏の亡霊”東誠一について、何か知っているか?
RL:アキラに問いかける形で、情報収集判定をするわけですね。【“黄昏の亡霊”東誠一】については、〈社会:ストリート〉か〈社会:警察〉、それから〈コネ:大鷹アキラ〉で目標値15です。
テツヤ:(カードを切る)任せろ、〈社会:ストリート〉で、達成値19。
RL:では、アキラは「その件なら知ってるぜ」と、以下のようなことを話してくれます。
“黄昏の亡霊”東誠一
七年前、“黄昏の亡霊”事件を引き起こしたテロリスト。“黄昏の亡霊”事件後にNBIが発足。現在も捜査を続けているが、未だに手がかりをつかめず、時効直前である。指名手配された東誠一の経歴はほとんど実態がなく、まさに幽霊。
土岐野貞秀という人物と瓜ふたつ。
都内で行なわれた衆院補欠選挙に立候補した増田志郎の街頭演説に姿を現わした。
エリカ:NBIも、増田センセの街頭演説に“黄昏の亡霊”が現われたってのは掴んで捜査してるのね。
唐巣:こちらでも掴んでいる情報ですからね。
テツヤ:増田は元々が警察官僚だからな。テロの標的になってもおかしくはないが……。だが、こいつは重要な情報を得ることができた。
唐巣:というと?
テツヤ:ユウカは、父親の土岐野貞秀を街頭演説で見かけたと言っていた。しかし、NBIはその演説に東誠一が現われたとして捜査をしている。つまり、土岐野貞秀と東誠一が同一人物の可能性が高まったというわけだ。
唐巣:ほう、なるほど。
RL:アキラは「話はそれだけか?」と聞きます。
テツヤ:もののついでに聞いておこう。土岐野貞秀という警察官を知っているか?
RL:「面識はないね。警察官だっていうなら、こっちで調べることはできるだろうけど」
テツヤ:いや、そこまでしなくてもいい。ただ、土岐野の娘さんから、捜索を頼まれていてな。
RL:「警察官の娘、かぁ……」と感慨深そうにつぶやきます。
唐巣:さて。「その話、くわしく聞かせてください」と話に割って入りましょう。
テツヤ:うわっ!? なんだ、突然。
唐巣:聞き慣れた声がしましたので、つい。
テツヤ:……相変わらず、耳ざといヤツだ。
テツヤは、唐巣のコネをダイヤで取得している。
唐巣とは仕事上でそれなりに知っている関係だ。
唐巣:あなたには負けますよ。“新宿の虎”さん。
RL:……“新宿の虎”?
唐巣:テツヤさんのニックネームです。私、人にニックネームをつけるのが趣味でして(一同笑)。
RL:なるほど(笑)。横でアキラが吹き出しそうになってますね。「……お、お前、“新宿の虎”だったのか。かっこいいぞ」
テツヤ:しばらく無視する(笑)。
唐巣:……話がそれました。まさか、あなたも東誠一を追っているとは。本当に、まともな筋からの依頼だったりします? されたりしてませんか?
テツヤ:そんな心配は無用だな。
唐巣:そうですか。街頭演説の場に姿を見せたということで、私も“黄昏の亡霊”を追っていましてね。少しでも情報が欲しいところなんです。
RL:するとアキラが「ウチには、その件についての捜査がどうこうなんて情報は入ってきてないね」と言います。
エリカ:機動捜査班の管轄じゃないってことかぁ。
唐巣:しかし、テツヤさんまで七年ぶりに現われたという“黄昏の亡霊”を追っているとは。
テツヤ:俺としては、“黄昏の亡霊”はどうでもよかったんだ。ただ、依頼人が捜している相手が、そいつに瓜ふたつなんだ。
唐巣:ひょっとしたら、同じ相手かもしれませんよ。
テツヤ:土岐野貞秀と東誠一が同一人物の可能性は高いが、その確証を掴んじゃいない。仮に同一人物だとしたら、その理由も探らないとな。
唐巣:では、それをはっきりさせるためにも、お互い協力しませんか?
テツヤ:ほう、あんたと協力するのか。
唐巣:こちらも入手した情報を教えるので、あなたが手に入れた情報を私にも教えてほしいのです。
テツヤ:宮仕えの紐つきになるのは気に入らないが、あんたは信用できる、いいだろう。
唐巣:ありがとうございます。
テツヤ:というわけで、さっそく土岐野の【民間企業への転職】について調べられないだろうか?
唐巣:いいですよ。こちらの情報網で、すぐに洗ってみましょう。
RL:では、〈社会:ビジネス〉もしくは〈社会:警察〉で、目標値は16です。
唐巣:(カードを切る)〈社会:ビジネス〉で判定。報酬点を3点使って、達成値16です。
RL:では、唐巣のスマートフォンに資料が送られてきます。
唐巣:どんな情報でしょうか。
RL:土岐野貞秀は、転職して民間企業に在籍していたことになっています。しかし、実際に働いていた形跡はありません。転職は、ダミーの可能性があります。
唐巣:ダミー? 身分を偽装したのですかね。
RL:転職前は、警視庁の優秀な刑事でした。転職の前に、警察庁の警備局警備企画課に出向した形跡があります。警備企画課は、通称“ヌル”を有しているといわれています。キーワード【“ヌル”】を得ます。
唐巣:……“ヌル”について、テツヤさんは何かご存じで?
テツヤ:これはプレイヤーとして質問なんだが、警備企画課ってのは公安警察だよな?
RL:そうです。今は、NBIが引き継いでいます。
テツヤ:俺の前歴はSPなんだが、警備企画課との関係ってどうなるんだ?
RL:警護対象が襲撃の標的になるようだと、SPにも情報の提供はあるようです。
テツヤ:つまり、警備企画課からSPに対テロ情報の提供はあったが、それ以外で深く関わることはないってことか。
RL:そういうことです。
テツヤ:唐巣さん。こういう情報は、あんたのほうがくわしいんじゃないか?
唐巣:いいえ、警察の組織内のことは潜られるとわからないものですよ。だからこそ、自由に駆け回る“新宿の虎”さんのような人が必要なわけです。“内調のカラス”である私は、空からしか物事を見ることができません。しかし、地を駆ける“新宿の虎”さんなら、大地のことはよく見えるでしょう?
エリカ:……その変なニックネーム、もしかして、あたしにもつけるの?
唐巣:エリカさんのニックネームは“浅草の赤い花”です(きっぱり)。
エリカ:もうついてたー!?(一同笑)
テツヤ:本人の許可も得ずに、勝手にニックネームをつけて、勝手に広めるな!(笑)
RL:「えー? なんかカッコいいじゃん。なぁ、私は?」と大鷹アキラが身を乗り出します。
テツヤ:お前もほしがるな。
唐巣:“NBIイーグル”とかどうでしょう?
RL:「おっ、いいかも」
テツヤ:いいのか? 刑事は妙なあだ名がつくと殉職率が上がるぞ。
RL:昭和の刑事ドラマの法則ですね(笑)。
テツヤ:しかし、このシーン、大きな収穫があった。大鷹アキラからの情報提供で、土岐野貞秀と“黄昏の亡霊”は同一人物の可能性が高まった。
唐巣:私も、土岐野貞秀の職歴を洗ったところ、ダミーであるかもしれないことと警察庁内の“ヌル”のキーワードを得ました。
RL:では、ここで何者かの《制裁》が唐巣に対して使用されます。
唐巣:なんと!?
RL:指定する社会ダメージは、「10 盗聴」です。
《制裁》は、社会ダメージを与えるイヌの神業だ。
市民権を剥奪したり、アクトの終了時に抹殺したり、〈社会〉や〈コネ〉の判定にペナルティを与えることもできる。
盗聴を指定されると、次のシーンでの発言や会話はすべて相手に盗聴される。
テツヤ:盗聴か……。
唐巣:どこかで聞かれているのでしょうね。まあ、警戒しておきます。
テツヤ:気をつけろよ。
唐巣:ええ、お互いに。
テツヤ:そんなところで、店を出る。
RL:それでは、シーンを終了しましょう。
* * *
RL:続いて、舞台裏です。
エリカ:じゃ、【土岐野ユウカ】について調べるわ。
RL:〈社会:ビジネス〉、〈社会:ストリート〉〈社会:メディア〉で目標値12です。
エリカ:〈社会:ストリート〉で判定。報酬点を1点使って、達成値12。
RL:では、次の情報が得られます。
土岐野ユウカ
一七歳の女子高生。一〇歳の頃、父親の土岐野貞秀は失踪してしまった。その心労で母親も失い、親類の援助で生活している。それ以外に変わったところはなく、いたって普通の生活を送っている。
現在、日置鉄也に父の捜索を依頼している。
彼女の周囲には、不審な人物が探りを入れているようだ。
RL:テツヤのアドレスと新しいキーワード【不審人物】を得ます。
エリカ:不審人物って、リサーチフェイズの1シーン目で絡んできたヤツらのことじゃないの?
RL:実は、調べると旭鷲警備の連中であることが判明します。ユウカが〈交渉〉に失敗していても、舞台裏でキーワードを得られるようにしました。
エリカ:なるほどねー。
唐巣:しかし、ユウカさんから見れば、我々も十分に不審人物ですよ。
エリカ:たしかにそうかも(笑)。
テツヤ:彼女から信頼されるよう心がけねば。
RL:では、舞台裏を終了し、次のシーンに移りましょう。