『トーキョー・ナイトメア リプレイ1 ブラックダイヤモンド』第1話特別掲載。

◆Research03◆内調対NBI
  シーンプレイヤー:唐巣サブロー
  シーンタロット:トーキー

 
 NBI本部近くのカフェを出た、唐巣サブロー。
 “黄昏の亡霊”に関する収穫はあった。
 さまざまな思惑おもわくが、水面下で動いている。
 すでに自身も盗聴されているようだ、周囲を警戒しながら街を歩いた。

 
RL:では、次のシーン。シーンタロットはトーキー。シーンプレイヤーは、唐巣サブローです。カフェから出て、街を歩いているところですね。
唐巣:テツヤさんから得た情報を元に、さらに調査を進めるつもりです。警察庁内のヌルという部署が気になりますからね。
エリカ:存在しないっていう、怪しい部署よね。ユウカちゃんのお父さんも関係あったみたいだし。
唐巣:くわしく調べないといけません。
RL:このシーンは、そんな情報を得た唐巣が、なぞの男たちに尾行されるシーンです。
一同:尾行!?
エリカ:そっか、神業を使われたものね。
RL:そして、唐巣はその尾行に気づきます。
唐巣:おや、気づいていいんですか?
RL:はい、向こうはかくす様子がありません。
唐巣:……隠すつもりがない?
RL:彼らが何者かを知りたければ、〈知覚〉または〈社会:警察〉で判定してください。目標値は12です。
唐巣:〈知覚〉で判定、達成値は18。
RL:18とは高い達成値ですね。唐巣を尾行しているのは、黒い服に身を包んだ、威圧いあつ感のある男たち……NBIの私服警官です。
唐巣:NBIですか――。
テツヤ:意外な連中につけられてるな……。しかし、神業を使ったのはNBI関係者のようだ。
唐巣:気をつけましょう。
RL:イヤーセルをつけた背広の男たちが、前後左右、ダイヤモンド上に囲んで尾行しています。
唐巣:相手もプロですねえ。
RL:圧迫あつ ぱく尾行という手法です。お前のことを監視しているぞと圧力をかけ、動きをふうじたり心理的なさぶりをかけたりするのが目的ですね。
エリカ:うわぁ、いやな感じ!
テツヤ:NBIはそんな尾行をしてくるのか?
RL:判定に成功しているので伝えますが、公安捜査の手法ですね。
テツヤ:となると、公安部の連中か。テロや過激派をマークする連中だ。
唐巣:私は、テロリストを追っていますからね。手柄てがらを横取りされたくないのでしょうか?
エリカ:同じ相手を追ってるなら、話し合いでもすればいいんじゃない?
唐巣:ほほう、それはいい。では、不意に細い裏路地にはいみましょう。
RL:彼らは、エキストラですので、唐巣ならすぐにさそせます。
 
「どこへ消えた!?」
 あわてて男たちが唐巣を追う。
 彼らには、上位警察として重犯罪や組織犯罪の捜査に対応すべく、尾行を始めとした各種訓練を受けてきたという自負がある。
 それがあっさりくつがえされたことで、プライドもくずれ、強いあせりが表情にかびがっていた。

 
唐巣:「おやおや。一体誰をお捜しで?」と、彼らの背後から姿を現わしましょう。
RL:「貴様……!」
唐巣:どうも、“内調のカラス”こと、内閣情報調査室の唐巣サブローです。
RL:「……内調が何故、東誠一の件について探っている?」
唐巣:そりゃあ、この日本を平和にするためですよ。
RL:「だったら、この件は我々NBIに任せてもらおう。手を引くがいい」
唐巣:ですが、“黄昏の亡霊”事件は、もうじき時効を迎えるという話じゃありませんか。今まで、お任せして解決していないのですよ。
RL:私服警官たちは舌打ちをします。
唐巣:あなた方の努力を無下にするわけじゃありません。むしろ、あなた方がめたからこそ、時効目前にして姿を現わしたのでしょう。
RL:「何にせよ内調が関わる案件じゃあない」
唐巣:――関わらなかった結果、テロが起こったらどうするんです?
 
 これといって特徴とくちようのない男から放たれたすごみ。
 内閣情報処理官という立場は、表沙汰おもてざたにできない事件も適切に処理することが求められる。
 ひと通りの修羅場しゆらばくぐけているのだ。

 
唐巣:我々は、お互い“テロが起きるとは思わなかった、止められなかった”という言い訳が許されない仕事に就いているのですよ。
RL:「…………」
唐巣:打てる手は打つべきなのです。あなた方はあなた方で捜査をし、私は私なりに調査を進める。それでいいじゃないですか。
RL:私服警官たちは、苦虫をかみつぶしたような顔をして引き下がります。しかし、今回の件でNBIの捜査協力は得られそうもありません。
エリカ:えー、協力してくれないんだ。
RL:まだ事件の背景は明かせませんが、NBIをはじめ警察にたよることはできないと思ってください。
唐巣:どうも、深いやみかかえてそうです。
RL:それと、唐巣の達成値が高かったので、もう少し具体的な情報を渡しましょう。
唐巣:おっ? それは期待ですね。
RL:彼らは、かつて増田の部下だった者たちです。
エリカ:ああ、あの立候補した増田センセね。
RL:「……いいか、我々は、いつでもお前たちを見張っている。警告はしたからな」と捨てゼリフをいて、去っていきます。
唐巣:ええ。私は私で、勝手にやらせてもらいます。
 
 NBIの私服警官たちの脅迫きようはくめいた言葉にも、唐巣サブローは一切表情を変えることなく、彼らは去っていくのを見送る。
 どうやら“黄昏の亡霊”は、想像以上に深い闇から現われたようだ。

 
テツヤ:この反応、痛い腹でも探られたのか。
唐巣:ただのテロ事件では終わってくれなさそうですね。“黄昏の亡霊”の七年ぶりの登場は……。
テツヤ:そして、悪夢が始まるわけだな。
唐巣:まったく、悪い夢ですよ。
 
*   *   *
 
RL:では、舞台裏になります。
テツヤ:俺は、【“ヌル”】について調べる。
RL:〈社会:警察〉〈コネ:矢田ケイスケ〉で、目標値は18です。
テツヤ:任せろ。(カードを切る)〈社会:警察〉で判定。絵札を出し、〈事情通〉3レベルがあるから+3して達成値18で成功だ。
RL:では、以下のことがわかります――。
 
“ヌル”
 公安警察内の情報収集を担当する部署の通称。警察内部では存在しないとされる。
 各道府県警の警備部への指導、テロ組織の内部協力者の獲得かくとく潜入せんにゆう工作等も行なう。
 秘密厳守が徹底てつていされ、警察官としての名簿めいぼ隠蔽いんぺいされる。活動内容は県警本部長、警視総監そうかんはおろか家族にすら活動は伝えない。直属部隊を指揮するのは通常、警視正の警察官僚が理事官として担当する。
 “ヌル”の中には、情報収集のために身分を偽っいつ わて潜入する捜査員そうさいんも存在する。
 NBI発足により消滅。しようめつ役目はがれた。
 
RL:つまり、警察の潜入スパイです。
エリカ:……つまり、ユウカのお父さんは、対テロの警察官だったかもしれないんだ。
テツヤ:ユウカにも、当然教えられないよな。東誠一の身分も、そのために警察が用意したものだろう。
唐巣:転職先の勤務実態がないこと、東誠一の身分が実態がないこと。このふたつを考えると、そういうことになりそうですね。
エリカ:じゃ、ユウカちゃんのお父さんって、テロリストに潜入調査しているうちに、本物のテロリストになっちゃったってわけ?
テツヤ:それはまだわからないな。
RL:では、エリカが舞台裏の判定ができます。
エリカ:【旭鷲警備保障】について調べておく。
RL:〈社会:警察、ストリート〉〈社会:ビジネス〉で、目標値は12です。
エリカ:〈社会:ストリート〉で、達成値12。
 
旭鷲警備保障
 治安が悪化した“黄昏の時代”に対応した警備セキュリティ企業。NBIのOBも多く入社しており、危機管理能力には定評がある。
 増田志郎が顧問こ もんを務め、警察時代の部下や元公安捜査官そうさかんが就職している。
 
エリカ:わりと最近できた、警察の天下り先ってことよね。元警官が会社のスタッフだから、優秀な警備員やボディガードがそろっていると。
唐巣:私が“黄昏の亡霊”を調べ始めた途端とたんに、増田派の警官に尾行され、警告されたわけですが……この件は増田志郎という元警察官僚が大きく関わっているのでしょう。
テツヤ:増田と“黄昏の亡霊”の間に、何かあるということか。
唐巣:なかなかきな臭くなってきましたね。この案件、私が“処理”しなくてはならないようです。
テツヤ:かもな。
RL:以上で舞台裏を終了し、次のシーンに移りましょう。