『トーキョー・ナイトメア リプレイ1 ブラックダイヤモンド』第1話特別掲載。

◆Research06◆待ち受けるもの
  シーンプレイヤー:日置鉄也
  シーンタロット:カゼ

 
 テツヤは新宿にもどると、周囲を警戒したのちにシャッターを下ろした。
 ユウカは、間違まちがいなくねらわれている。
 今は、この殺風景で無骨な事務所が彼女を守るとりでの役割を果たすだろう。

 
RL:では、次のシーン。シーンカードはカゼ。シーンプレイヤーはテツヤです。先ほどのシーンの後、時刻は夕方から夜にかけて。テツヤの事務所です。
唐巣:私も登場を希望します。チームを組みたいのですが、よろしいでしょうか。
エリカ:あたしも入れてほしいわ。
 
 キャストたちは、いつでもチームを組むことを宣言することができる。
 チームを組んだ場合、チームのだれかが登場すると、一緒にそのシーンに登場することになる。
 チームの解散も、いつでも宣言することができる。
 シーンプレイヤーであるテツヤが登場するこのシーンでは、チームを組んだ唐巣もエリカもシーンに登場する。
 
テツヤ:さて、無事に事務所にもどれたなら、周囲を警戒した後にシャッターを閉める。ユウカには、応接用のソファに座っていてもらおう。
RL:ユウカは、怯えていますね。
テツヤ:当然だ、あんな連中に狙われたんだからな。
エリカ:じゃ、登場する。ガラーン……。なにこれ、何もないじゃん! 本当にこれが事務所?
テツヤ:現われるなり、ご挨拶あいさつだな。
エリカ:ここ、ガレージとか駐車場ちゆうしやじようっていうのよ。殺風景だし、油臭いしさ。
テツヤ:ちゃんと“日置探偵たんてい事務所”の看板は出ているだろう?
ユウカ:「わたしも、最初は見つけられませんでした」とユウカも言います。
エリカ:でしょう?
テツヤ:相棒と一緒にいられる最高の物件だと思うんだがな……。
エリカ:あらそう? あと、飲み物はコーヒーしかないの? 勝手にコーヒーをれるわ。
RL:「あっ、それすごく苦いんです!」とユウカが、あわあわしています。
エリカ:……うわ、真っ黒!
テツヤ:ツーリング明けのつかれをぶっ飛ばしてくれるんで、俺は結構気に入っている。
エリカ:人にはすすめられないわね。
RL:さて、ユウカにこれまでの話を聞かせますか? それとも、内緒ないしよにしますか?
エリカ:話しちゃっていいんじゃない? テツヤは依頼を受けてるんだし、本人だってなんでこんな目にってるのかは気になるでしょ。
テツヤ:そうだな……。では、ユウカに話そう。
RL:では、ユウカも「あの、お父さんは……」と聞いてきます。
テツヤ:君のお父さん……土岐野貞秀は、潜入捜査の部署に配属され、事件に巻き込まれたようだ。
エリカ:ユウカちゃんのお父さんって、警官だったんだ?
RL:「警官は辞めたと聞いていたんですが……」
テツヤ:それは表向きのことのようだ。出向という形で、任務に参加していた形跡がある。まだ、確実な証拠しようこつかめてないが……。
RL:「お父さんが、そんなことを……」
テツヤ:公安の警官は、テロ組織に潜入捜査を担当することがある。そのときに退職あつかいとして名簿も隠蔽される。その任務中は、家族にも極秘にする。君のお父さんは、その任務についていたようだ。警察に問い合わせても、何の返答も得られないだろう。
RL:「お父さんが“黄昏の亡霊”ってテロリストと姿が似ていたのも、関係があるんですか?」
テツヤ:それは、まだなんとも言えないが……。
唐巣:つながりは、まだわかりませんね。私は、NBIから圧力はかけられましたけどね。
エリカ:関係があるかもしれないけど、現時点では不明よね。
唐巣:情報が足りませんね。
エリカ:もう少し調べないとね。
テツヤ:同一人物の可能性が高いが、確証はない。このことは、まだ言わないでおこう……。
エリカ:ユウカちゃんは、警察とテロリストとの何らかのトラブルに巻き込まれたってことね。少なくとも、お父さんはそうよ。何のトラブルなのかは、まだわからないけど。
RL:「そうなんですか……」と、ユウカはショックを受けたようです。
エリカ:でも大丈夫、あなたが依頼をした探偵は、ボディーガードもできるから。絶対あなたのことを守ってくれるわ。
唐巣:“新宿の虎”として名をせる男ですからね。
テツヤ:馳せてない。その名で俺を呼ぶな!(笑)
 
 実は、唐巣が言ってるだけという。
 
エリカ:テツヤもなんか言ってあげなさいよ。
テツヤ:そうだな。依頼人の命を守るのも、俺の業務のうちだ。安心するといい。
RL:「……はい。よろしくお願いします」
エリカ:ちょっと、それだけ!? もっと、頼りになりそうなことを……。
テツヤ:悪いな、不器用で。ともかくここに集まった面々は、この事件に何かしらの形で関わっているようだ。お互いの情報を持ち寄ることで、真相がわかるかもしれん。
エリカ:……ここから先は、ユウカちゃんに話を聞かれないところで相談をしたいんだけど。情報収集判定とかしたいし。
RL:家に送り届けます?
唐巣:狙われたのに、家に帰すことはできませんよ。
テツヤ:一旦いつたん、二階の居住スペースを提供しよう。片づければ、なんとかなるだろう。
エリカ:その間に、ユウカちゃんがしばらく身をかくせる手配をしましょ。安全なホテルとかね。
テツヤ:その辺は任せる。
RL:「ありがとうございます」
エリカ:心配しないで。絶対に解決してあげるから。……こっちは仕事なんだけど、仕事として引き受けてるっていう事情は話さないでおく。
RL:実は、今回の事件ではエリカが一番報酬をもらっていますからねー。
エリカ:あっ、そういえば。
唐巣:私、〈裏予算〉の判定をまだできてないので、国から予算をもらってないんですよね……。
RL:妙に生々しいですね、そういうと(笑)。
 
 〈裏予算〉は、任務のために編成された表には出ない予算を受け取るクグツのスタイル技能である。
 成功すると、唐巣は5報酬点を獲得する。
 
エリカ:(声をひそめて)じゃ、ユウカちゃんがた後、あたしたちだけで方針の相談しましょ。
テツヤ:じゃ、ユウカを二階で休ませよう。
RL:わかりました。
 
 ユウカの二階の居住スペースで休ませたのち、三人はシャッターを閉めたガレージで今後の方針について話す。
 打ちっ放しのコンクリートが、やけに冷たく感じられるのだった。
 
テツヤ:では、あらためて。エリカ、何故お前はユウカを助けようとするんだ?
エリカ:くわしいことは話せない。
テツヤ:だろうな。あえて追求する気はない。話せる範囲はんいでいい。
ユウカ:ユウカちゃんの周りで事件が起きる……。それだけ伝えられて、解決してほしいと頼まれたの。それ相応の能力はあるつもりだし。ペルソナをカタナに変えて、レイザークロウを見せる。
唐巣:これでも、彼女は“浅草の赤い花”と呼ばれた女ですからね。
エリカ:まゆをひそめるわ。
テツヤ:敵に回らずに協力してくれるというなら、特に問題はない。
エリカ:まだ何が起こるのか、わかったもんじゃないけど。あたしは“事件を止めて”と依頼されているの。テロが起きるなら止める、ユウカちゃんがねらわれるなら護る。敵対はしないでしょ?
唐巣:その点に関しては信用しましょう。あなたも、このトーキョーの闇で生きるプロフェッショナルなのですから。
テツヤ:気になるのは、何故ユウカが狙われたかという点だ。
エリカ:狙ったのは、増田志郎の息のかかった警備会社……旭鷲警備保障よね。
唐巣:そして、増田志郎の前に姿を現わしたのは、テロリストの“黄昏の亡霊”東誠一……。
テツヤ:七年前の“黄昏の亡霊”事件が何か関係ありそうだな。まずは【増田志郎】について調べるか。どうも、こいつが今回の件のキーをにぎってるようだ。
RL:増田志郎について調べるなら、〈社会:メディア〉か〈社会:警察〉、〈社会:社交界〉で、目標値は12です。
唐巣:手札があまりよくないので、このシーンの私は情報収集が上手くいかないかもしれません。
エリカ:〈社会:ビジネス〉で判定。達成値13よ。
 
増田志郎
 衆院選補欠選挙に立候補した民自党の新人候補者。五〇代男性。NBIの発足にも尽力じんりよくした元公安警察の官僚で、危機管理のエキスパート。
 七年前の“黄昏の亡霊”事件でも、首謀者の東誠一以外の関与かんよしたグループを一斉いつせいに検挙し、対テロ捜査での実績を残した。
 NBI内部にも、増田グループという派閥はばつが存在している。その経歴から、テロリストの標的となっているようだ。
 
RL:キーワード【増田の経歴】を差し上げます。
エリカ:いろいろ考えると、唐巣さんを《制裁パニツシユ》で盗聴したのも、ユウカちゃんを狙わせたのも、増田センセよね。
唐巣:理由は何でしょうか?
テツヤ:土岐野貞秀が“黄昏の亡霊”だとして、彼を動揺どうようさせてさそすつもりなのかもな。
エリカ:……だとしたら、元警察官僚や議員候補がやることじゃないわね。
テツヤ:まったくだ。
エリカ:残りの【極東旅団反抗の狼】は?
RL:〈社会:警察、ストリート〉で、目標値は16。
テツヤ:〈社会:ストリート〉で判定。【理性】が6、〈事情通〉で+3、スペードの7を出して、達成値はぴったり16。
 
極東旅団反抗の狼
 “黄昏の亡霊”東誠一に心酔しんすいする【天谷響子あまたに・きようこ】率いる過激テログループ。反グローバル主義、反資本主義を掲げる。現在も東誠一からの司令を待って潜伏せんぷくしているといわれている。
 二三区外の小規模出版のビルが拠点きよてん
 
RL:拠点のアドレスと、キーワード【天谷響子】を差し上げます。
エリカ:つまりこれって、東誠一につくテログループがいるってことよね。
唐巣:【増田の経歴】と【天谷響子】が残ってますが、どっちかを調べておきます?
エリカ:どっちか調べられそう?
唐巣:手札がイマイチなので、ここは〈裏予算〉をやっておきましょう。みなさんが情報収集をしている後ろで、「予算をくださいよ」って電話をします。
エリカ:ついでに、安全なホテルをさえるお金も工面してもらえば? 今回、警察はたよれないし。
唐巣:(カードを切る)では、〈裏予算〉で報酬点を5点獲得しました。
RL:まとめますと、このシーンで増田志郎を調べ、テログループ極東旅団反抗の狼の拠点を掴んだ、ということですね。
エリカ:極東なんちゃら、名前が長いわね。
RL:極東旅団でいいです(笑)。
エリカ:じゃ、そうする。
RL:では、シーンを終了しましょう。