『トーキョー・ナイトメア リプレイ1 ブラックダイヤモンド』第1話特別掲載。

◆Research08◆亡霊の声
  シーンプレイヤー:日置鉄也
  シーンタロット:バサラ

 
 エリカを一時的に安全なホテルまで送り届け、テツヤは事務所に戻る。
 事務所や自宅にかくまうより少しはましだが、相手はNBIにも顔が利く相手なので油断はできない。
 そんなテツヤのスマートフォンに、着信がある。
 非通知だった。

 
RL:次のシーン。シーンカードはバサラ。シーンプレイヤーはテツヤです。このシーンでは、イベントが用意されています。
テツヤ:ほう、なんだ?
RL:このシーンで、テツヤのスマートフォンに、非通知の電話がかかって来るシーンです。
エリカ:じゃあ、このシーンで登場しないでおきましょう。
テツヤ:電話に出る。少し、慎重しん ちようになろう。
RL:電話の相手は、くぐもった声で「娘を助けてもらったことには礼を言う」と言います。
テツヤ:“黄昏の亡霊”!? いや、土岐野貞秀か!
一同:なんだってー!?
唐巣:本人から直接接触があるとは……。
RL:「……私は亡霊だ。もう死んだのだよ」
テツヤ:お前の娘は、父親を捜している! 今からでもおそくない。姿を現わして、娘と一緒に暮らしていかないか?
RL:「私には、もう時間は残されていないんだ。家族と過ごす時間さえうばわれた。今さら、戻ることなど、できないんだよ」
テツヤ:…………。
RL:「私にできるのは、私をおとしいれた者たちを排除はいじよすることだけ。そう、亡霊なのさ。私をテロリストにしたのは、あいつだよ」
テツヤ:あいつというのは、増田志郎のことか?
RL:「ふむ。一介いつかいの探偵にしては、なかなかの調査能力じゃないか」
テツヤ:昔の伝手をたよったからな。お前の娘も守ってやる。だから、馬鹿ばかな真似はよせ。
RL:「人生を無茶苦茶にされた男の復讐ふくしゆうとしては、そんなに馬鹿な真似とも思わんがね。私は、あいつのためにテロリストになったんだ」
テツヤ:増田の命令ということか。
RL:「テロを未然に防ぐ、そう聞かされていた。だが、そうはならなかった。命令どおりに行動した結果、私は“黄昏の亡霊”東誠一として、あいつから切り捨てられたのさ」
テツヤ:……“ブラックダイヤモンド計画”に関わることか?
RL:「さてね。七年前にそう言われただけだ」
テツヤ:お前の罪状も、後半年で時効のはずだ。何故、今になって姿を現わした?
RL:「言っただろう、時間がないと」
テツヤ:……何を考えている?
RL:「今度は、お望み通り多くの血が流れる。そうすれば、自分のやったことを思い知るはずさ」
テツヤ:たとえ、お前が消された存在だとしても、お前には家族がいたはずだ。その家族にじるようなことはするべきじゃない。
RL:「亡霊に家族などいない――」
 
 電話の主の声は、そう言い切った。
 決意ともあきらめともとれる感情がめられてた。
 亡霊に家族はいない。
 もし、電話の向こうの相手が土岐野貞秀だったとしたら、この七年間の間に妻を失っている。
 成長期との娘とも、七年間会っていないのだ。


 
テツヤ:……お前が亡霊を気取るというのなら、俺は全力でそれを止める。それが、お前の娘を悲しませないための唯一ゆいいつの方法だ。
RL:「止められるのか? 日本の警察が総力を挙げても止められなかった、この私を」
テツヤ:止められるさ。俺は、警察にはできないことをやるために辞めたんだからな。
RL:「お互い、警察を見限った者同士だったか」電話の向こうから、笑う声が聞こえます。
テツヤ:そうかもしれないな。あとは、どちらがやりたいことをつらぬとおせるか……それだけだ。
RL:「そんな気概きがいのある警官と七年前に出会えていたら……いや、やめよう。どうせ、あと少しですべて終わる」
テツヤ:……娘へ、伝言はないのか?
RL:「土岐野貞秀は死んだ。ただ、それだけだ」
テツヤ:メッセージは預かった。だが、できれば、お前の口から娘へ伝えてやってくれ。
RL:テツヤの声に答えはなく、激しくむ音が聞こえてきます。
テツヤ:――おい、どうした?
RL:電話は切れました。
テツヤ:ちっ!
RL:ここでシーンを終了します。
 
*   *   *
 
RL:続いて、舞台裏です。
エリカ:手札が悪いから、手札を回す。……ダメだわ、これじゃ、全然戦えない!
RL:〈白兵〉1レベルですからねー。
エリカ:なんとかなるかと思ってたのよー。
唐巣:まずは、【テロ計画】について調べます。
RL:〈社会:ストリート〉か〈社会:警察〉、もしくは〈社会:ビジネス〉で目標値15です。
唐巣:〈社会:ビジネス〉で判定しましょう。
RL:情報は、以下のとおりです。
 
テロ計画
 増田志郎が主催しゆさいする都民会館での演説を狙ったテロ計画。聴衆ちよう しゆうごと爆死ばくしさせようとする大規模なものである。立案者は、“黄昏の亡霊”東誠一。
 
エリカ:やっぱり、増田センセを狙っているんだ。
唐巣:なんとしても止めねばなりませんね。
RL:舞台裏を終了し、次のシーンへ移ります。