◆Research09◆増田の秘策
ルーラーシーン
シーンタロット:クロマク
黒塗りのリムジンが都内の高級料亭にやってくる。
降りたのは民自党の井戸山幸輔。
女将の案内で、奥の間に通される。そこには、所属政党の新人候補である増田志郎が待っていた。
RL:次のシーン。ルーラーシーンになります。おっ、シーンタロットはクロマク。ちょうどよかった、どこかの料亭で、増田志郎と井戸山幸輔が密談をするシーンです。
テツヤ:まさにクロマクのシーンだな!
エリカ:ぴったりすぎるわ。登場判定に失敗して、カードを回しておくね。
都内某所の料亭の一室で、増田志郎と井戸山幸輔が面談している。
増田は年上であるが、議員としての経歴は井戸山のほうが長く、知名度でも大きな差がある。
新人候補の増田としては、是非とも彼の影響力を票につなげたいところだ。
井戸山もその力の差を承知しているためか、尊大な態度で構えている。
「都民会館での講演会ですが……井戸山先生、どうかお力添えのほどを」
へりくだりながら、増田は札束を差し出した。
RL:これは増田の《買収》です。効果は、都民会館の演説会を開くというものです。演出に、井戸山幸輔の応援演説も追加しました。
エリカ:定番のシーン! 政治家っていやあね。
唐巣:ちょっと悲しくなりますね……。
エリカ:唐巣さんは、国のために駆けずり回ってるっていうのにね。
テツヤ:《買収》はエグゼクのスタイルの神業だな。金で買えるものは何でも買うことができる。都民会館での演説会くらいは軽いだろう。
その札束を無造作に受け取りながらも、井戸山は訝しむ表情を崩さない。
「もちろん応援演説はするとも。ただ、増田先生。例の件に関して、ちゃんと対処はしているんでしょうな?」
井戸山は、確認するように増田に問いかける。
「公安出身の君が、テロリストに狙われていると判明すれば、選挙は上手くいかないぞ? それに、私は君の巻き添えを食ってテロに遭うのも、ご免こうむりたいところだ」
「私は“黄昏の亡霊”など恐れません。それに、私には秘策があります」
増田志郎は、眼鏡を糺した。
自信に満ちた含み笑いを浮かべている。
「ほう。秘策とは?」
「これを施せば、“黄昏の亡霊”も絶対に手を出せないでしょう――」
エリカ:秘策ねえ。どうせろくでもないことだと思うけど……。
RL:増田は、携帯を取り出して誰かに連絡します。すると「はい、土岐野ですが――」とユウカの声が答えます。
テツヤ:ユウカに電話したのか!?
RL:「土岐野ユウカくんだね? 君の父親のことで、大切な話がある。君の父親の土岐野貞秀は、都民会館の演説会に現われるはずだ」と。
エリカ:えええ~、ユウカちゃん呼び出すの!?
RL:「ど、どういうことですか?」と戸惑うユウカに、増田は「その日、君が来ればすべてがわかる」と《神の御言葉》を使用します。
一同:神業だ―――!!
テツヤ:まさか、精神崩壊してしまうのか?
RL:与える精神ダメージは、精神ダメージチャートの「18 パニック」を指定します。
エリカ:つまり、ユウカちゃんがパニック状態になるってこと?
RL:はい、その結果、心が乱れて正常な判断をしなくなるという展開です。
《神の御言葉》は、カリスマの神業である。
相手を精神崩壊させることもできるが、精神ダメージチャートから任意のダメージを指定することができる。本来、精神ダメージを与えて「18 パニック」となったから言って、相手を自由に操れるわけではない。しかし、今回はシナリオの仕掛けとして、拡大解釈をした運用となっている。
RL:チャートには、「パニックになる。BS:重圧(理性) を受ける」とありますので、ユウカは増田の言葉でパニックに陥ります。「本当に、お父さんのことがわかるんですね!」
テツヤ:こいつ、ユウカを盾にするつもりか……!
エリカ:ユウカちゃんがいれば、お父さんもテロをためらうだろうってこと? ひっどいわ!
唐巣:なかなかの悪党ですよ、ええ。
RL:ユウカも、普段ならテツヤに相談したでしょう。しかし、増田が父親のことに触れると動揺し、言うことを聞いてしまいます。
テツヤ:これは、ユウカを責められんな……。
エリカ:当たり前じゃん。ユウカちゃんを利用しようっていう、増田が全部悪い!
RL:増田が「誰にも知られないよう、君ひとりで来るんだ。お父さんのことが心配ならね」と言うとユウカは「は、はい……」と答えます。
* * *
RL:それでは、舞台裏です。
エリカ:カードを回す! 手札がわるーい。
テツヤ:俺もだ。
唐巣:私も、ここでは失敗です。ブラックダイヤモンド計画については、表舞台で調べましょう。
RL:それでは、次のシーンに移りましょう。