◆Research11◆目覚めを待つ炎
ルーラーシーン
シーンタロット:クグツ
東京都N区の都民会館には、新人候補を応援しようと、多くの男女が姿を見せていた。
市民として、政治に関心を払う善良な人々である。
想定以上の来場者数を確認し、満足げに増田は笑みを浮かべた。
順風な選挙の滑り出しを確信してのことだろう。
だが、彼以外にもこの状況を喜んでいる人物が存在していた。
RL:シーンを開始します。シーンタロットは、クグツ。このシーンはルーラーシーンとなります。キャストは登場しませんが、手札を交換できます。
テツヤ:OK。
RL:舞台は補欠選挙の舞台となった東京N区にある都民会館です。増田の選挙演説会の開始前、人々が次々と大ホールへと入っていくという状況です。
エリカ:真面目な人が多いのね。
RL:増田の支持者が主体ですが、新たな有力立候補者ということで、世間の関心も高いのです。さて、この会場やけに警備が厳重です。
唐巣:旭鷲警備の仕切りですか?
RL:この警備体制の厳しさなら、不審な人物はたちどころに見つかってしまうレベルです。ルール的に表現すると、増田が《買収》で都民会館一帯を買い取り、ホワイトエリアにしたという扱いです。
テツヤ:なるほど。そいつは安全だ。
RL:増田も、つつがなく来場者が増えていく様子にご満悦といった表情です。
唐巣:“黄昏の亡霊”の影が見え隠れするこの状況で油断しているとしたら、少々政治家としては軽率ですね。
RL:それほど秘策に自信があるのです。
会場では、新たな立候補者についてあれこれ語る聴衆のざわめきが反響していた。
そんな中、最前列にはやや場違いな高校生の少女が座っていた。
土岐野ユウカである。
彼女は、膝の上でその細い手を握りしめ、静かに座っていた。
唐巣:というわけで、不安を抱えつつユウカが会場にやって来ました。“黄昏の亡霊”も、娘を巻き込んでテロを起こすわけにはいかないでしょう。
テツヤ:つくづく卑怯な男だ。
エリカ:でも、“黄昏の亡霊”の思惑はどうあれ、反抗の狼はテロを実行するつもりなんでしょ。
RL:ええ、もちろん……。
そんな会場に、一台の車が入ってきた。
運送屋らしく、与党法務大臣の応援用の花輪が荷台に乗っている。
厳重なセキュリティチェックが行なわれるが、ほどなくそれも終わり、会場へと入っていく。
「ま、身元もしっかりしているし、大丈夫だろう。大臣閣下のお気遣いは、ありがたいくらいだ」
警備の責任者のつぶやきを背に、目深にかぶった帽子の下で運送屋の瞳がギラリと輝くのだった。
RL:とまあ、そんな感じでテロリストたちは警備を潜り抜け、会場に侵入を果たすわけです。この際黄昏の亡霊は《完全偽装》を使用しています。
テツヤ:それはエキストラの警備責任者では気づきようもないな
唐巣:きっと事前に、会場に入るための仕込みをきっちりやっていたのでしょう。
テツヤ:それより……。もしや黄昏の亡霊はユウカがここにいることを知らない?
エリカ:その可能性はあるわね。
RL:そのあたりは以降のシーンで。こうして、会場には増田、テロリスト、キャストの面々が、それぞれの思惑を抱えて集うことになります。
エリカ:役者はそろったってわけね。
RL:シーンを終了し、次からはクライマックスフェイズとなります。