●クライマックスフェイズ
◆Climax01◆亡霊の怨嗟
シーンプレイヤー:日置鉄也
シーンタロット:タタラ
都民会館の地下駐車場。
運送業者の車両の傍らに、男が立っていた。
“黄昏の亡霊”こと土岐野貞秀――。
死人のように青白い顔の中で、怒気をはらんだ眼光だけが爛々と輝く。
彼は、切り捨てられ、七年の時を奪われた。
その恨みを晴らすべく、すべてを無に帰そうとする覚悟が瞳に宿る。
テツヤたちは、そんな男に声をかけた。
RL:それでは、クライマックスフェイズです。シーンプレイヤーはテツヤ。シーンタロットはタタラ。みなさんはテロを阻止するため、都民会館へとやって来ました。
テツヤ:おう。
RL:舞台は地下駐車場。爆弾を設置するために侵入した“黄昏の亡霊”がひとり運搬車両の近くでたたずんでいます。
エリカ:“黄昏の亡霊”だけ? “反抗の狼”のメンバーは?
唐巣:おおかた、爆弾の設置のためにしかるべき場所で工作中というところでしょう。
RL:そんなところです。
テツヤ:では声をかけよう。「土岐野、バカなことはやめろ! お前の恨みを晴らすためのテロを決行しても、罪もない人が傷つくだけだ」
RL:すると、彼は眼光鋭くみなさんを睨み「私たちを止めにきたのか。だが、もう遅い。爆弾はすでに仕掛けてある」と答えます。
テツヤ:どうしても、やめるつもりはないのか。
RL:「ああ。私を抹殺したのは、あの増田だ」
テツヤ:……何があったんだ。
RL:「増田が立案し、私が潜入工作を遂行した「サーバー爆破テロ」は、未然に防がれる予定だった。ブラックダイヤモンド計画の一環だ。意図的に企てたテロを進行させ、実行直前にそれを防ぐというテストが行なわれるはずだった」
テツヤ:テロを防ぐテストのために“反抗の狼”に潜入したのか。
RL:「そうだ。しかるべき時に公安の仲間が、テロを防ぎにやってくる。私は、そう信じて過ごしていた。……だが、助けはこなかった! そして、計画は決行の時を迎えてしまう。凶悪で猜疑心の強いテロリストに囲まれ、私にテロを実行する以外の選択肢があると思うか? あの日以来、私は潜入捜査官ではなく、本物のテロリストになったのだ」
テツヤ:土岐野……。
土岐野貞秀は、テロリストとなって潜伏した。
そしてテロ実行の命を受けて実行する。
だが、その結果は本物のテロリストとして指名手配犯となるという結果をもたらした。
彼に潜入捜査とテロ実行を命じた上司、増田志郎はおそらく保身のために彼を切り捨てた。
七年の時間をテロリストとして、かつての同僚たちに追われ、余命もあとわずか。
土岐野は、亡霊としてこの街に帰ってきたのだ。
いや、帰ってこざるを得なかった。
RL:「増田は、私を見捨てた。その理由は未だわからんがね。当初は時効を迎えた後、世間にすべてを語るつもりでいたよ」
テツヤ:時効まで残り半年だ。そうすれば罪に問われることなく、すべてを暴けたはずだ。
唐巣:“黄昏の亡霊”事件の公訴時効を待たず、リスクを冒してまであなたが姿を現わしたのは、それほど復讐の念が強いということですか?
RL:「まっ、それもある――」と言ったところで、苦しげに咳き込みます。
テツヤ:もしや、あんた……。
RL:「……逃亡生活の不摂生が祟ったのか、肺ガンにやられてね。もう余命幾ばくもないのさ」
テツヤ:時間がないというのは、そういうことか。
エリカ:だからテロをやってもいいというの?
RL:「では、あんな男を国政の場に送り込んでいいと思うのか? 私は、それだけは阻止せねばならないと考えている」
エリカ:そこは同感だけどさ……。
テツヤ:お前の事情はわかった。だが、その爆弾を爆発させるわけにはいかない。何故なら……。
RL:と、ここでダダダッ! と駆け込んでくる一団がいます。
エリカ:ええっ!?
襲撃をかけてきたのは、爆弾をしかけ終わったと思しき“極東旅団反抗の狼”たちであった。
「大丈夫か“黄昏の亡霊”!」
と天谷響子が日本刀を抜き放って斬り込んでくる。
「政府の犬め! 我らの理想を邪魔するな!」
「天誅を受けろ!!」
……などと、配下のテロリストたちも口々に叫び、“黄昏の亡霊”を護ろうと、テツヤたちに肉薄する。
唐巣:イヤなタイミングで邪魔が入りましたね。
テツヤ:ちっ、《真実》で爆弾のありかを聞きだしておきたかったが……。
RL:カット進行中に、《真実》を使ってもいいですよ。
テツヤ:む?
唐巣:しかし、まだ打ち消せる神業を持った仲間がいるかもしれません。
テツヤ:そうか。わかった、テロリストどもを片づけるのが先だな。
エリカ:この戦闘の進行次第で展開も変わるかもしれないしね。
テツヤ:だな。しかたない。まずはイカれたテロリストたちを掃除するか。
唐巣:命がけの清掃業ですね。特別手当も出ないし、散々ですよ。
テツヤ:言ってろ。
RL:では、カット進行に移ります。