『トーキョー・ナイトメア リプレイ1 ブラックダイヤモンド』第1話特別掲載。

◆Ending04◆真実の疾走しつそう
  シーンプレイヤー:日置鉄也
  シーンタロット:カゼ

 
 都内の総合病院――。
 愛車に土岐野ユウカを乗せ、テツヤは駐車場にゴーストライダーを止めた。
 そして受付でその男の名を告げる。
 土岐野貞秀は、この病院に入院していた。

 
RL:それでは、テツヤのエンディングになります。シーンタロットはカゼ。
テツヤ:土岐野が入院している病院に、ユウカを連れて行くシーンにしたい。
唐巣:土岐野さんはどうなるんです?
RL:収容された土岐野貞秀は、末期がん患者かんじやとして病院に入院しています。容態ようだいが落ち着いている間は、会話もできます。
テツヤ:そこにユウカを連れてきて面会させよう。その間に、事情を語る。君のお父さんは、警官として潜入捜査をしていた。テロリストなんかじゃない。
RL:「わたし、何も知りませんでした」
テツヤ:正体がバレれば、君たちもまれてしまう。だから、ずっと姿を見せられなかった。
RL:ユウカとテツヤがその病室を訪れると、ベッドには土岐野貞秀がかされています。

「お父さん……!」
 ユウカが、父の姿を見るなりった。
 土岐野は身を起こし、いとおしげにきとめる。
 父と娘には、七年間の断絶がある。
 残された時間は多くはない。
 だが、たとえわずかだとしても、奪われた七年間をわせることはできた。
 “黄昏の亡霊”は、もう死んだ。
 父と娘が、そこにいるだけだ。
 真実はそれで十分なのだと、テツヤは思った。

 
RL:「テツヤさん、ありがとうございます」
テツヤ:後は、親子ふたりの時間を過ごしてくれ。俺は、その場に背を向ける。
 
*   *   *
 
 それから一月ほどが経ち――。
 トーキョーは、いつもと変わらなかった。
 なけなしの富と栄光を求め、世界中の影が集う。 新人候補、増田志郎の落選と凶悪事件や混沌こんとんとした世情を告げるニュースが続く。
 そして、ひとりの男が娘をのこしてった。

 
テツヤ:土岐野が亡くなった後、俺は墓参りにやってくる。
RL:ユウカは、墓の前でテツヤを待っています。
テツヤ:残念だったな、お父さんのことは。
RL:「いえ、父は苦しまずに逝きました。わずかな時間でしたけれど、一緒に過ごし、最期を看取ることができてよかったです」
テツヤ:それならよかった。
エリカ:ユウカちゃん、大人よね……。
RL:多感な時期に父は失踪しつそうし、母を亡くし、そして再会した父を看取ったわけですからね。
唐巣:事情が彼女かのじよを成長させたのですね。
テツヤ:俺も元警官だ、家族にも言えないような仕事をかかえることもある。君とお父さんの時間が、わずかしかなかったのは、申し訳なかったと思う。
RL:「いいんです。父も言ってました。テツヤくんは、本当に優秀ゆうしゆう探偵たんていだって」
テツヤ:そうか。最後に、少しだけでも君が望む時間が取れたのならば、せめてもの救いだ。
RL:公安捜査官である土岐野貞秀は、潜入捜査をげたことになります。遺族であるユウカに、退職手当が支給されます。
エリカ:へえ、そうなるんだー。
RL:たぶんですが“黄昏の時代”でも、そうなるんじゃないかなと。
唐巣:でも、そうあってほしいじゃないですか。
RL:進学するユウカにとって、学費のいくらかの助けにはなるでしょう。
テツヤ:なら、よかった。
RL:「父と最後に話をしていて、少し気になることがあったんですが――」
テツヤ:なんだい?
RL:「本当に、父にやましいところはなかったのでしょうか? ときどき、暗い顔をするのが気になって……」
テツヤ:やましいところはないさ。彼は、職務に忠実すぎるほど忠実な警官だった。俺はうそはつかない男だ、信じてくれ。
RL:「はい、ありがとうございました!」
テツヤ:では、彼女の前から去ろう。
 
 嘘をつかない男なんて嘘っぱちだ。
 正直に生きられるほど、立派でもない。
 人を傷つける真実をきつけ、きしめるような優しさだって持ち合わせていない。
 己を偽っいつわて生きるのには、慣れている。
 だから、いつか報いを受ける日が来たとしても、後悔こうかいだけはしない。

 
エリカ:じゃ、バイクの前であたし待ってる。
テツヤ:お前か……。
エリカ:不器用だけどできるじゃん、優しい嘘――。
テツヤ:…………。
エリカ:別に、あたしはいいと思うわ。絶対に嘘をつかないって男より、信用できる。あたしも嘘の世界で生きてるようなもんだし。
テツヤ:それには答えず、ゴーストライダーに乗ってキーを回す。今日は、遠くまで行きたい気分だ。
エリカ:じゃ、黙って見送る。
RL:いいでしょう。アメリカンスタイルのゴーストライダーが、エンジンをたかぶらせて疾走します。このシーンでエンドマークがかび、シナリオ終了です。おつかさまでした。
一同:お疲れ様でしたー。
 


トーキョー・ナイトメア リプレイ
第一話「トワイライトファントム」
―FIN―