●オープニングフェイズ
◆Opening01◆現われた亡霊
ルーラーシーン
シーンタロット:カリスマ
西暦二〇二X年――。
東京都第N区選出の衆議院議員が、一年以上の任期を残して死去。それにともない、衆議院補欠選挙が公示された。
現政権の前途を占う意味でも注目されるこの選挙、与党民自党は新人の増田志郎を送り出した。
治安が著しく低下した“黄昏の時代”において、NBI創設にも関与したエリート警察官僚という前歴を持つ増田候補は大きな注目を集めている。
RL:では、アクトを開始します。まずは、オープニングフェイズ。最初のシーンはルーラーシーンとなります。シーンタロットはカリスマです。
エリカ:じゃ、あたしたちの登場しないシーンね。
RL:はい、オープニングは指定されたキャスト以外、登場できません。
テツヤ:では、俺たちはシーンを観客として見守ることになるな。
RL:このシーンでは、今回の事件の始まりを予感させる描写が行なわれます。“黄昏の亡霊”がトーキョーにふたたび姿を現わす、そんなシーンです。
一同:なんと!?
RL:東京都第N区で衆議院の補欠選挙が行なわれることになり、都内某所で立候補者が選挙カーを止めて街頭演説をしています。
エリカ:『TNM』での選挙って、現実の選挙と同じなの?
RL:基本的には同じです。あと、N区はどこでもない場所で、前任の議員は病死で怪しいことはありません。
唐巣:つまり、今回のシナリオは選挙がポイントではないってことですね。
エリカ:あっ、なるほどね。
RL:演説しているのは、増田志郎という与党の新人候補者です。五〇代の男性で、なかなか切れ者そうな雰囲気を漂わせています。前歴は警察官僚で、テロ対策や危機管理、NBI創設などに功績があります。
エリカ:あー、いかにもって感じの候補者ね。
RL:選挙カーの壇上に登って、悪化したトーキョーの治安維持についての主張を行ない、支持を求めているところです。応援演説には、井戸山幸輔も駆けつけています。
エリカ:あの井戸山センセが? じゃあ、増田センセも絶対悪いヤツよ(笑)。
唐巣:井戸山先生、『TNM2』に載っているパーソナリティに、わざわざサイコパスって書いてありますからねえ。そんな人とつるんでるとなると、増田という方も怪しいもんです。
RL:井戸山は「これからのトーキョーはテロの脅威に直面することも多くなるでしょう。よりいっそうの対策が必要になってきている。そこで頼りになるのが彼、増田志郎さんです!」と演説を始めます。
若手のホープ、井戸山幸輔の応援もあって、増田志郎の演説には多くの聴衆が集まっている。
その中に、ひとりの男がふらりと現われた。
目深にチューリップ帽をかぶった、トレンチコートの男――。
ひどく場違いで、まるで亡霊のようだった。
ふと、演説中の増田候補がその男に気づく。
すると、見る間に顔が青ざめていく。
RL:トレンチコートの男は選挙カーを見上げているんですが、青ざめた増田の演説が止まり、聴衆もざわつき始めます。
テツヤ:増田は、その男のことを知っているのか?
唐巣:ただならぬ雰囲気でしたが、そのようですね。
RL:それについては、このシーンでは答えないでおきます。演説の中断は、時間にして一~二分ほどですが、その短い時間でトレンチコートの男は姿を消し、増田は演説を再開します。
唐巣:じゃ、その間に井戸山先生が間をつないだりするんですね。
RL:そうですね。小声で「増田先生、しっかりしてください」とたしなめます。
テツヤ:増田は、そのトレンチコートの男を知っていそうだな。
RL:そして、そのトレンチコートの男に注目していたのは、増田だけではありません。
テツヤ:……む?
RL:たまたまそこを近くの高校の制服を着た女子高生の一団が通りかかるんですが、その中のひとりが「あっ……」と思わず声を上げました。
テツヤ:女子高生か?
RL:一団の中でも、おとなしそうな娘です。一緒に帰っていた友人たちが、「どうしたのー?」と声をかけるんですが、「……ううん、なんでもないの」と答えます。しかし、その女の子の表情は晴れないままです。
エリカ:気になるわねー。
RL:その気になる余韻を残しつつ、このシーンを終了しましょう。
* * *
エリカ:謎めいた感じだけど……あのトレンチコートの男が“黄昏の亡霊”みたいね。
テツヤ:元警察官僚の増田の街頭演説に、謎のトレンチコートの男が現われた、か。
エリカ:さらに、何か事情を知ってそうな女子高生も登場したわね。うーん、いろいろ気になるわ。
RL:そしてシーンの舞台裏、登場しなかった人……今回は全員ですが、一枚手札の交換が行なえます。
エリカ:(カードを捨てる)するするー!
テツヤ:手札回しは重要だからな。
唐巣:まったくです。
RL:では、次のシーンに移ります。