22年目のニューロエイジ
(GF別冊29座談会・前編)

『ゲーマーズ・フィールド別冊Vol.29 トーキョーN◎VA 22nd Anniversary』の発売記念と告知を兼ねて、その冒頭に掲載した座談会「22年目のニューロエイジ」の内容を公開することにしました。
 少々長いので、分割し3回に分けて掲載していきます。
 この座談会を読んで興味を持った方はぜひ『GF別冊』の方を読んでみてください。
 また、2015年4月発売予定の新サプリメント『トーキョーN◎VA THE AXLERATION サプリメント ビハインド・ザ・ダーク』に関する話題も載っています。
 そんな感じで盛りだくさんの座談会です。ぜひお読みくださいませ。

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■はじまり
―――それでは、『ゲーマーズ・フィールド(以後、GFと省略)別冊29』に掲載する『トーキョーN◎VA THE AXLERATION』(以後、『TNX』)特集の座談会の収録を始めます。よろしくお願いします。
一同:よろしくお願いしまーす!
―――それではまず、参加者の皆さんには自己紹介をお願いします。
鈴吹:ではわたしから。『トーキョーN◎VA』(以後、『N◎VA』)シリーズのメインデザイナーの鈴吹太郎です。
丹藤:『N◎VA』のシナリオや、『TNX』のリプレイを執筆させていただいている丹藤武敏です。
藤井:フリーライターの藤井忍です。このたび、本誌にて『TNX』のリプレイを執筆させていただくことになりました。
―――それでは、皆さんよろしくお願いします。

■『N◎VA』とは?
鈴吹太郎―――では、本誌で初めて『トーキョーN◎VA』に触れるという方もいると思いますので、まずはゲームの説明からお願いします。
鈴吹:わかりました。『トーキョーN◎VA』は、F.E.A.R.が出来たのとほぼ同時期の一九九三年一月にツクダホビーから発売されたTRPGです。
藤井:今年で最初に発売されてから二十二年目になるんですね。
鈴吹:はい。現行の最新版である『TNX』は、その5thエディションにあたります。
―――歴史の積み重ねを感じますね。
鈴吹:その間カバーイラストとタロットは、ずっとイラストレーターの弘司先生に描いていただいて、展開してこれました。
―――次はゲームの内容について説明をお願いします。
鈴吹:『トーキョーN◎VA』は、トーキョーN◎VAという近未来の都市を舞台に、色々な人々が事件に巻き込まれたり、冒険したりします。
―――その他のゲームの特徴はどんなものでしょう?
 TNX
鈴吹:タロットカードになぞらえた“スタイル”という他のゲームのクラスに当たるものを三個選びます。その組み合わせでキャラクターを表現するというところは特徴に挙げられると思います。
丹藤:ダイスの代わりにトランプを使用して判定するTRPGというのも特徴的な要素ですよね。
鈴吹:そうですね、特徴といっていい部分だと思います。で『N◎VA』の最初のキャッチコピーは、“サイバーアクションRPG”でした。
藤井:最初は“サイバーパンクRPG”じゃなかったんですよね。
丹藤:『トーキョーN◎VA The 2nd Edition』(以後、『TN2』)のキャッチコピーは、確か“アーバンアクションRPG”でしたよね。
藤井:『トーキョーN◎VA The Detonation』(以後、『TND』)の時にキャッチコピーが“サイバーパンクRPG”になるんでしたっけ?
鈴吹:そのとおりです。ようやく“サイバーパンクRPG”になりました。

■丹藤武敏のヒミツ

―――それでは今回のゲストについて話題を進めようと思います。まずは丹藤さんから。
丹藤武敏丹藤:よろしくお願いします。
―――丹藤さんについてはこれまであまり情報が露出していないので、基本的なところからお聞きしたいと思います。まず初めて遊んだTRPGを教えてください。
丹藤:初めて遊んだTRPGは、『ワースブレイド』(*)です。
藤井:何か『ワースブレイド』を選んだ理由とかあるんですか?
丹藤:私が中学生の頃に親戚のお兄さんがTRPGなるものを持ってきまして。それが『ワースブレイド』だったんですよ。
藤井:なるほど。
丹藤:で、「お前が、ワースメイカーをやれ!」と言われまして(笑)。
鈴吹:GMをやったのか。
丹藤:はい。やりました。ただその後、はTRPGをプレイする機会に恵まれませんでした。機会に恵まれたのは大学に入ってからです。
鈴吹:大学に入るために、東京に出てきたんだっけ?
丹藤:はい。サークルに入ってTRPGを遊ぶ機会が増えました。
藤井:そのサークルは、何人くらいの規模だったんですか?
丹藤:私がサークルに入ったころは、百人を超えてました。
藤井:百人ですか! すごいですね。
鈴吹:ちなみに、丹藤くんが人生で一番たくさん遊んだTRPGは何なの?
丹藤:大学生時代は『GURPS』(*)をかなり遊んでます。ただ現在だと『N◎VA』といい勝負ですかね。

●『N◎VA』との出会い

―――では、丹藤さんが『N◎VA』に触れた切っ掛けを教えてください。
藤井忍丹藤:大学生のとき友人に誘われて『TN2』をクルードルール(*)で遊んだのが最初です。
鈴吹:『TN2』は、テクニカルルールとクルードルールに別れていたからね。
丹藤:遊んでみて「《死の舞踏》という神業を使うと、敵は死ぬ」というルールにすごい衝撃を受けました(笑)。
―――確かに衝撃的なルールですね。
丹藤:でも、実はその後『N◎VA』を遊ぶ機会にはしばらく恵まれませんでした。
藤井:そうだったんですか。
丹藤:大学を卒業した後になって友人から『トーキョーN◎VA The Revolution』(以後、『TNR』)を教えて貰いまして、それからたくさん遊ぶようになりました。
藤井:丹藤さんが本格的に『N◎VA』を遊び始めたのは『TNR』以降なんですね。
鈴吹:その頃はどんな風にゲームを遊んでたの?
丹藤:主に当時出ていた『スーパー・シナリオ・サポート(*)』(以後、SSS)を遊んでいました。
鈴吹:『SSS』について、少し説明しておくと、隔月でシナリオを提供していたサプリメントのシリーズ名です。
藤井:『N◎VA』の他にも『ブレイド・オブ・アルカナ』など様々なゲームのサポートをしていたんですよね。
丹藤:そうですね。『SSS』は私の青春でした(笑)。ところが困ったことがあって。
藤井:困ったこと?
丹藤:遊びすぎてシナリオが足りなくなってしまったんです(笑)。
藤井:なんと!(笑)
鈴吹:『SSS』すら遊び尽くしてしま
ったんですね(笑)。
丹藤:はい。それが切っ掛けで自分でシナリオを書くようになりました。
鈴吹:その頃にわたしが丹藤君と出会うわけです。切っ掛けは彼が投稿してきてくれたシナリオがあって……。
丹藤:はい。『TNR』に掲載されているシナリオ「セルフサクリファイス」の続編を書いて投稿したところ、お声が掛かりました。
鈴吹:「もしかして戦力になるかも」と期待して、会社に来てもらって話をしていたら、そのとき「実は……」といって『ブレイド・オブ・アルカナ(*)』のシナリオが二本出てきた(笑)。nova_sss10
丹藤:そのシナリオが『ブレイド・オブ・アルカナ The 2nd Edition スーパー・シナリオ・サポート Vol.4 女神の誓い ~Empress Oath~』に採用され、デビューにいたりました。
藤井:とんとん拍子にデビューしたんですね。
鈴吹:あのときのシナリオは二本とも面白かったなあ。
丹藤:ありがとうございます。そこから『トーキョーN◎VA The Revolution REVISED』(以後、『TNRR』)の付属シナリオや『SSS』のシナリオを執筆しました。
鈴吹:その後シナリオを山のように書いて……百本は超えたんだよね。
丹藤:そうですね。確か百本目のシナリオを書いた時に皆が祝ってくれたんですよ(*)。流石に百本より先は、数えてません(笑)。
鈴吹:なお、「セルフサクリファイス」の続編「セルフサクリファイスⅡ」は、『トーキョーN◎VA The Revolution スーパー・シナリオ・サポート Vol.10 Mirror Shade ~錆びた鏡~』に採用されています。

●『SSS』について

鈴吹:『SSS』については思い出に残るシナリオもいっぱいあるよな。
丹藤:たくさんありますね。思い出してみると、「アイツも殺した」、「コイツも殺した」となるわけですが(一同爆笑)。
藤井:なるほど。NPC殺戮の歴史になるわけですね(笑)。
鈴吹:その当時、実際に『SSS』を遊んでくれていたプレイヤーさんたちから聞いた話になるんだけどね。
藤井:はい。
鈴吹:一番ゲームを遊んでいた頃に『SSS』をプレイしていたから『SSS』は青春なんだって。
藤井:さっき丹藤さんも言ってましたよね。私もその気持ちはよくわかります(笑)。
鈴吹:リアルタイムで、『SSS』をプレイしているとワールドの設定が進んで段々とゲストが歳を取っていくので、同時代性みたいなものを感じるのだそうだ。
丹藤:そうそう。よく分かります。
藤井:確かに『SSS』を通じて『トーキョーN◎VA』の世界は変わりましたよね。
丹藤:そういう意味では、「タタラ」の『SSS』は特に印象に残っています。
鈴吹:確かに、『SSS Vol.17 Virtual Girl ~二進法のマリア~』は思い出深いな。
藤井:確か……AIが人間になるという連続シナリオでしたっけ?
鈴吹:そうです。そのキャンペーンを踏まえて『TND』に版上げした時には、「AIのキャラクターをプレイヤーが作成できる」ようにしました。
丹藤:そうでしたね。
鈴吹:『TNRR』までは、プレイヤーが「自分はAIだ」というキャラクターを作っても演出でしかなかった。
丹藤:それが、『N◎VA』という世界で「AIにも人権がある」と認められるように変化したというのをキャンペーンシナリオで表したんですよね。
鈴吹:そのとおり。
丹藤:そのお話に登場する「AIの救世主」を生み出したのはそれぞれのシナリオをプレイしたキャストのタタラなんですよね。
鈴吹:そう。「世界を変えたのはシナリオを遊んだあなた方自身だ」、という仕掛けになってます。
―――なるほど。
鈴吹:ところが困ったことがひとつあって。
藤井:困ったこと?
鈴吹:『トーキョーN◎VA』の歴史を書く時に、世界を変えた人物の名前が書けない。それぞれの卓にいるキャスト自身だから(一同爆笑)。
藤井:それぞれの卓ごとに世界を変えた人の名前が違うからですね(笑)。
丹藤:ゼロ(*)を殺したのも名も知らぬキャストですしね。
藤井:そういえば丹藤さんの書いたリプレイ「火星人故郷へ還る」に登場したカーロスが持っていたコネクションが〈コネ:どこかのキャスト〉というカーロスと関係のある読者のキャストの誰かでしたね。
鈴吹:そうそう。シナリオ主体で世界が変わっていた結果そんなことだらけに(笑)。
丹藤:あと、数々のゲストを殺している、現在N◎VA最強の暗殺者は誰かというと、実はキャストということになるんですよね(笑)。

●丹藤リプレイ
―――丹藤さんが初めて書いたリプレイは何になりますか?
丹藤:初めてリプレイを書いたのは、GF別冊で掲載した『アリアンロッド剣豪伝 明星連也降魔剣』(*)になりますね。
鈴吹:あぁ! 『アリアンロッド剣豪伝 明星連也降魔剣』か。あれはセッションもリプレイも面白かった。
丹藤:昔は、ああいうシナリオばっかりやってました(笑)。
鈴吹:あの話で「変なNPCが登場する」という丹藤くんのリプレイの方向性が決まったよね(笑)。
丹藤:本当にそうですね。そして変なNPCは『トーキョーN◎VA』のリプレイにも引き継がれるわけです(笑)。
鈴吹:『トーキョーN◎VA』で初めてリプレイを書いたのは、『GF別冊Vol.24鈴吹太郎の希望』に掲載されたリプレイ「火星人故郷へ還る」だったんだよね。
藤井:あれは、『TND』の最後のリプレイですね。
鈴吹:あのリプレイあのリプレイは、カーロスを巡るとんちきな火星のやりとりが面白かった! ひさびさに、カーロスを堪能したよ(笑)。
丹藤:(突然カーロスになって)火星は存在するんだ!
鈴吹:そんなこたぁ、知ってるよっ!!(一同爆笑)
▼註釈
(*)『ワースブレイド』
1988年に株式会社ホビージャパンから発売。
巨大ロボットが存在するファンタジー世界で、冒険者となって遊ぶロボットファンタジーTRPG。
(*)『GURPS』
スティーブ・ジャクソン・ゲームズ社から発売されている汎用TRPG。一九九二年にグループSNEの翻訳で『ガープス・ベーシック』が発売された。
(*)クルードルール
データやルールを極力少なくして最小限のものだけでプレイするルール。
(*)『スーパー・シナリオ・サポート』
ゲーム・フィールドから発売されていたユーザーサポート。シナリオと追加データが掲載され、隔月のペース発売されていた。
(*)ブレイド・オブ・アルカナ
株式会社KADOKAWA エンターブレインから発売されているヒロイックファンタジーTRPG。現在、第三版となる『ブレイド・オブ・アルカナ The 3rd Edition』が発売されている。ゲームデザインは鈴吹太郎。
(*)百本目のシナリオ
友人たちが、百本目のシナリオ達成を記念して、帝国ホテルで記念パーティを開いてくれた。
(*)ゼロ
“暴力警官”ゼロのこと。『トーキョーN◎VA The Revolution REVISED SSS Vol.16 The Trouble with Bubbles ~世界を我が手に~』のシナリオで死亡する。
(*)『アリアンロッド剣豪伝 明星連也降魔剣』
『ゲーマーズ・フィールド別冊Vol.16 菊池たけしがこりずにまいりました!!』に掲載されたリプレイ。『アリアンロッド・リプレイ・アンサンブル』(株式会社KADOKAWA 富士見書房刊)に再録されている。