『アリアンロッドRPG 2E 改訂版』対応ネームドエネミーデータ掲載。(2018/6/26更新)

『アリアンロッドRPG 2E パーフェクト・アイテムガイド』。
様々なアイテムが収録される中に世界に1匹しかいない強力なネームドエネミーからドロップする、エクストラドロップが掲載されました。
そこで、ネームドエネミーのエネミーデータを『改訂版』対応して発表することにしました。


上記のような『改訂版』対応のネームドエネミーのエネミーデータ・エネミースキルを収録したPDFファイルをアップいたします。
『アリアンロッドRPG』公式サイト、または下記リンクよりダウンロードできますので、是非ご利用下さい。


※更新有り次第、こちらのページにリンクを追加していきます。
※全て同一のファイルに追加して掲載されています。過去にダウンロードされた方は、最新版のコチラのファイルで更新してください。
●ネームドエネミーデータ(PDF)
(6/26更新、収録エネミー:ジャガーノート、“妖精の騎士”アロンダイト・ブランド、ダゴン、バロン・サムディ)
(6/4更新、ネームドエネミーのスキルデータを別ファイルに分けました)
(4/26更新、収録エネミー:イビルソード、女王花、ミリオンズ、“暴風王”パズス)
(3/29更新、収録エネミー:アンノウン、塊怨樹、“ギルマン王”ガープ=ドゥラッド、“四方の使徒”ファデラの影)
(収録エネミー:“虚無の魔術士”ドーマ、テラフェニックス、“ゴブリン四天王”アバト、チュートリアル伯爵、マグネティックゴーレム)
●エネミースキル&パワー(PDF)
※ネームドエネミーのスキルデータは、こちらのファイルに掲載するようになりました。

『アリアンロッドRPG2E』を使った異世界トリップシナリオ発想法

 このページでは『アリアンロッドRPG 2E ストレンジャーガイド』の重版を祝して、『ゲーマーズフィールド別冊32 異世界へGO! アリアンロッドRPG2E&剣の街の異邦人TRPG』に掲載された、『アリアンロッドRPG 2Eを使った異世界トリップシナリオ発想法』の記事を掲載いたします。



◎はじめに
 この記事は『アリアンロッドRPG2E』(以後、『AR2E』)を念頭において、“異世界トリップもの”のシナリオをどうやって作るかについて解説することを目的にしています。
 もしかすると以前からゲーマーズフィールド別冊を読んでいる方の中には、この記事が本の冒頭部分に載っていることに違和感を覚える人がいるかもしれませんね。普段なら冒頭は座談会が掲載してありますから。
 いつものゲーマーズフィールド別冊で巻頭に座談会を載せているのは、ゲームデザイナーの声を載せることによりそれぞれの本やゲームの方針を伝えるためです。
 要するに「なんのための特集か」ということを伝えるためなんですね。
 それではなぜ今回は「シナリオ作成講座」みたいな記事を冒頭に据えたのか。それは当然この記事が「なんのための特集か」がわかるような内容になっているからなわけです。
 記事の最後の方で改めて触れますが、どういう部分が「なんのための特集か」になっているのかについては、このまま読み進めていって自分で確認してみてください。

■異世界トリップとは?
 ここでひとつ、確かめておきましょう。“異世界トリップ”という言葉は『AR2E』のサプリメント『アリアンロッドRPG 2E ストレンジャーガイド』で定めた用語です。
 言葉の意味は「現代地球から剣と魔法のファンタジー世界にトリップ(転移する)というような感じになります。
 同じ物語パターンを表すのに他にも色々な単語が使われているのですが、ひとつに絞らないとゲームの用語としては使い勝手が悪いので、この言葉に統一したという次第です。

●エリンへGO!
 また異世界トリップという言葉は『AR2E』に限定すれば、「現代地球という世界からゲームの背景世界である“エリン”に転移するお話」ということになります。
 この『AR2E』における新しい趣向については、シナリオアイディアがドンドン湧いてくる人もいれば、「なにをすればいいんだろうなあ?」と悩んでしまう人もいるんじゃないかと思います。
 また、「アイディア(やりたいこと)は思いつくけれど、それをどうまとめていいものか」に悩んでしまう人もいるかもしれません。
 そんな「上手くシナリオを作れない」人はいったい何からどうすればいいのでしょうか?
 まずはそのことから触れていきましょう。

●特別なことはしない
 まず、ひとつの解決方法として「シナリオ作成では特別なお話の工夫はしない」という手も考えられます。
 誤解を招かないようにあらかじめ言っておくと「一切なんの工夫もしない」という話ではありません。
 もともと『AR2E』というゲームは「剣と魔法の世界を舞台に、ダンジョンなどと呼ばれる障害を突破していく」遊び方が中心のゲームです。
 ですから、プレイヤーの扱うキャラクター(PC)は、ゲーム上の機能として「ダンジョン中などに仕掛けられた障害を突破するための能力」を持っています。
 それは異世界トリップした現代地球人(『AR2E』では“アーシアン”というキャラクタークラスで表現される人々)でも同じです。
 だから現代地球人のPCはエリン出身のPCたちと同じように、既存のシナリオで活躍することができるのです。
 ならばそもそも工夫なんて話はしなくていい?
 それはちょっと違います。
 例えばPCにダンジョンを突破する能力があるとして、その人物が進んで危険な目に遭いたいかどうかはまた別の話です。
 できればそのPCなりの目的をもって(プレイヤーとしては楽しく)ダンジョン(などの障害)を乗り越えてほしいわけで、そのための工夫の余地があります。そういった工夫の中にはアーシアン用のそれもあるわけです。
 例えば、GMが依頼者や村人といったノンプレイヤーキャラクター(NPC)を通してPCに話しかけるのもひとつの方法です。
 GMが「見かけない恰好だな。東方から来たのかい?」とか、PCの発言に対して「なんだそりゃ?」「どこでそんな話を聞いたんだ?」などとNPCを通じて話しかけることで、PCは現代地球からの来訪者という立ち位置を確立し、プレイヤーは会話を楽しむことができるでしょう。

●工夫の余地は?
 すると今度は「じゃあ、わざわざこんな記事を書く意味はあるの?」という疑問がわくかもしれません。
 もちろん答えは「ある」になります。シナリオレベルでできる工夫は多く、それを通じてより楽しく異世界トリップもののお話を楽しもう、というのがこの記事の主旨です。
 ではその工夫とはどんなものなのか?
 このあと順次説明していきましょう。

◎シナリオタイトルを作ってみよう
 突然ですがここで、アーシアンシナリオのタイトルを決めてみましょう。
 下記の「タイトル決定シート」をコピーして使うと便利ですが、なんならメモ用紙や使用済みコピー用紙の裏を使っても問題ないでしょう。
 それから6面体ダイスを用意してください。D66を振るので2個あった方が便利です。
 まずはタイトル決定シートに書いてある、1から6の項目のうち、ひとつをROCして結果を決めてください。
 次に下記に掲載されている「シナリオタイトル」決定表を見てください。
 AからFまで六個の表が載っているはずです。この表をROC(*)して、タイトル決定シートの項目を埋めていってください。
 なお、[F]表をROCするのはベースで6を選択したときだけです。

*ROC
ロール・オア・チョイスの略。ダイスを振って決定しても、プレイヤー自身が選んでもよいという意味。『AR2Eルールブック①改訂版』P24を参照のこと。

■実際に使ってみよう
 では、ここから例示のために、実際に表を使ってみましょう。
▼ベース
 ベースを1D6したところ、5が出ました。
“[A]の[B]が[C]ら[D+E]そうです”という結果になったわけです。
 内容には問題ないので、このまま進めることにします。
▼[A]表
[A]表をD66した結果は36。
「経営者」になりました。
 これもこのまま進めます。
▼[B]表
[B]表をD66した結果は23。
「わたしたち」になりました。
 これもこのまま進めます。
▼[C]表
[C]表をD66した結果は35。
「美味しいものを食べた」になりました。さすがは経営者って感じですね。
 これもこのまま進めます。
▼[D]表
[D]表はD66です。ダイスを振った結果は11。
「優しい」になりました。これもこのまま進めます。
▼[E]表
[E]表をD66した結果は25。
「将軍になった」です。[E]表の結果は[D]表との組み合わせになります。
「優しい」+「将軍になった」の組み合わせで「優しい将軍になった」ということになります。
 ベースが5のときは[F]表は使いません。よって、ここまででタイトルは完成となります。


●結果を見てみよう
 それでは結果を見ていきましょう。
 頭から該当箇所を埋めていくと、“「経営者」の「わたしたち」が「美味しいものを食べた」ら「優しい将軍になった」そうです”となりました。
 どうでしょう、それっぽいタイトルになったと思いませんか?
 例えば「PCたちは現代地球で経営者をしていたところ、事故や召喚でエリンにやってきて、美味しいものの代償として将軍をすることになった」というお話かもしれません。
 あるいは他のお話も考えられます。「美味しいもの」というのは例えば神前に供えられた特殊な食事だったのかもしれませんし、エリンで必死で生き残ろうとしていたときに、村人から恵んでもらった粗末な食事なのかもしれません。他にも色々アイディアが出てくるかと思います。
 ともあれ、そのくらいの想像の働くぐらいにはタイトルっぽいと言っていいかもしれません。
 できればここで、読者の方にも表を使ってみてほしいところです。実際に使うことで、理解が深まると思いますので。
 ただし、面倒だと思うなら、実際に表を使わずに続きを読んでいただいてもかまいません。

●種明かしをひとつ
 さて、表を使ってタイトルが決まりました……というこのタイミングでひとつ種明かしをしておきます。
 実は表を使った結果についてですが、そのまま『AR2E』のシナリオタイトルに使えるとは限りません。
 というのも、プレイヤーには隠しておきたいオチに当たる部分まで、決まっていてネタバレになる場合があるからです。
 ただし、絶対に使えないというわけでもありません。組み合わせによっては先ほどの例のように、オチにあたる結果とその前との間にギャップがあってタイトルとして使えるケースもあるでしょう。
 とはいえ、この記事の趣旨としてはどちらでも問題なかったりします。
 この記事でのポイントはこれらのチャートをつかうと「なぜタイトルっぽいテキストが生成されるか」にあります。そこがこれから解説する「異世界トリップもののシナリオ」の構造と関係していて、それを解き明かすことが異世界トリップもののシナリオを作るさいに役立つのです。

◎シナリオタイトル決定表に隠された秘密
“異世界トリップ”というのは、私たちの住んでいる世界に似た現代地球という世界から『AR2E』の舞台であるエリンにトリップ(転移)するというパターンのお話でしたね?
 そのパターンと「シナリオタイトル作成表」がどんな関係にあるのかを見ていきましょう。
▼[A]~[C]
 シナリオタイトル作成表のうち、[A]表には、人物の現代地球での立ち位置を並べてあります。
 次に[B]表ですが、この表は[A]表の人物が「PC目線で」どんな関係なのかについてまとめてあります。例えば[B]表の結果が「わたし」だった場合、[A]表の人物はPCの誰かになります。
 次の[C]表はシナリオのイベントが起こる切っ掛けを並べてあります。そして[C]表の項目は、基本的に現代地球でなら「日常的にしている」ことだったり、あるいは「やろうと思えばできる」ことです。
▼[D]と[E]
[D]表と[E]表はひと組のセットになっています。
 これはすぐに分かると思いますが、[D]表には[E]表の内容を形容する言葉を並べています。
 例えば「名状しがたいモンスターになった」とか、「美しい戦艦になった」といった具合ですね。
 そして[E]表の内容は、異世界を舞台にしたファンタジー作品で起こりそうな事件を並べてあります。
▼[F]表とベース
[F]表は「○○譚」、つまりなにについてのお話かに適した単語を並べてあります。
 ベース表の項目も含む話ですが、ここで表現されているのは「お話のトーン」です。
 例えば「なにか?」というタイトルは、その問いを発している誰かの物語であることを意味します。また、ちょっとつっけんどんな言い回しは物語の対象になっているキャラクターの自尊心の強さをうかがわせます。
 対して「○○譚」の場合。対象とお話に距離があり、「こういうお話だよ」と説明している感覚が現れています。例えば「なにか?」に比べた場合客観的な感じになるわけです。

■別の仕掛けがあるんです
 ここで改めて全体を見直してみましょう。[A][B][C]の表は現代に関係ある事柄が、[D]表と[E]表にはセットで異世界での事柄が書いてあるわけです。
 そうなると異世界トリップのお話が想起されて当然……となるわけですが、実は別の仕掛け、というかこの記事の中心となる要素はここにあるのです。

◎鍵はギャップ
 その仕掛けとは、表の中の「現代の要素」と「異世界の要素」に関連がないように、つまりわざとギャップができるように作ってあるということです。
 さらに[D]表に形容詞が並んでいるのは、[C]表と[E]表の内容がよりギャップを生むようにするための仕掛けです。
 なんでそんなにギャップを作りたいのか?
 それこそが異世界トリップもののシナリオを作るさいの鍵だからです。

■ギャップの分類
 とはいえ、ギャップギャップと連呼していても、いまひとつ曖昧でとらえ所がありません。
 そこで、ギャップという要素を「ミスマッチ」「フィールイン」「メタフィクション」という三つの側面から、それをどう取り扱えばよいのかについて考えてみましょう。

●ミスマッチ
 ミスマッチとは、「調和しない組み合わせ」のことです。例えばファッションなどで使われる言葉です。
 本来ネガティブな意味の言葉なわけですが、そこから「あえて調和しない面白さを狙う」というような意味も派生しました。
 例えば「異世界グルメ」などと呼ばれる「現代地球の美味しい食事を異世界人が食べたらどうなるか?」というタイプのお話などは、分かりやすいミスマッチの例といえるでしょう。

●フィールイン
 フィールインとは「fill in」、つまり「埋める」という意味です。
 では具体的に「なにを埋めるのか」というとギャップを埋めるということになります。「fill in the gap」ということですね。
 例えば、あるPCが「いきなり自分がモンスターに転生していることに気がついた」としたら、そのPCが「自分がモンスターになった理由を知りたい」と考えて、調査をするというのはフィールインの一例です。
 異世界に行って何かに転生したり変身したりする小説などをよく見かけますが、主人公をいきなり追い込めるという便利な様式なわけです。

●メタフィクション
 フィクションの中にフィクションを取り込んだ内容のお話です。
 例えば『AR2E・リプレイ・フォーリナーズ』のPCであるラヴィニアは自身を「悪役令嬢」とみなしていました。彼女にとってはエリンでの生活は第二の現実のはずですが、それを「客観視する自分」を持っていた、ことがメタ要素になります。

●相互に関連する
 これら三つの要素は単独で現れるということは滅多にないでしょう。
 例えばミスマッチになるようなアイテムがダンジョン内に落ちていたとしたら、「なぜ落ちているのか?」理由を求める、つまりフィールインが発生するでしょう。
 あるいは、先ほど例にあげたラヴィニアのように「あれ?
 自分が異世界にいるっていう小説を読んだことある」という発想で、自分の置かれた立場のギャップを埋るというのはメタフィクションとフィールインが同時に起きているわけです。
 そんなわけで、三つの要素は関連して発生するものなのですが、シナリオのアイディアを考える際に「自分がどの要素を中心に考えているか」を意識するとシナリオを思いつきやすくなったり、アイディアを上手くまとめられたりするのです。
 そんなわけで、ここからそれぞれの要素について個別にアイディアの出し方や展開の方法について説明していきましょう。

◎ミスマッチ
 ミスマッチは「調和しない組み合わせ」であり、それを面白く組み合わせることがシナリオでミスマッチを活かすことにつながります。
 ではどういうミスマッチが面白いのでしょうか?
 実は「人それぞれな上に時期によって変化する」ので、これは絶対面白いというミスマッチの例はあげにくかったりします。
 しかし、あなたにとって面白いミスマッチを発見する確率を上げる方法はあります。「ランダムを利用する」のです。
 改めてP7の「シナリオタイトル作成表」をご覧ください。
 先に[A][B][C]の表は現代に関係ある事柄が、[D]表と[E]表にはセットで異世界での事柄が書いてあると書きました。
 当然[A][B][C]と[D][E]の間にミスマッチが発生するわけですが、実は[A][B][C]の間でも[D]と[E]の間にもミスマッチになる要素を入れてあります。
 例えば「凡人のヒーロー」や「美しい建国をする」などはミスマッチとなるわけです。

●面白い組み合わせとは?
 では、その組み合わせが面白いかどうかですが、判定の方法はふたつあります。ひとつはあなた自身がその組み合わせを見て「ぷっ」と噴き出してしまった場合。要するに面白いから噴き出しちゃうわけで、それを活かさない手はありません。
 もうひとつは組み合わせを見た瞬間にあなたの頭の中でそのミスマッチが起きた理由を思いついてしまった場合。そもそもシナリオを作るのが目的なのですから、その閃きを活かしてシナリオを作り上げてしまえばいいのです。
 そういう練習を繰り返しているうちに、組み合わせるコツのようなものがつかめるようになると思います。そして、コツさえ分かれば必ずしも表やランダムに頼らなくても、アイディアが思いつくようになるでしょう。
 例えば、「勇者のパーティが深夜のファミレスにいたら?」という組み合わせが面白いと思ったとしましょう。
 そこから「異世界とコンビニ」「異世界とネット通販」「異世界と戦闘機」、といった具合に「もしファンタジー世界と無縁そうなものがあったら?」という具合に、面白さの法則を自分で意識できるようになるということです。
 また、落語の三題噺のようにプレイヤーにお題を出してもらい、それらを結びつける、という手段も訓練に有効です。その場合、プレイヤー同士が相談しないように、別々に紙に単語を書いてもらい、それをまとめるとよいでしょう。

◎フィールイン
 次はフィールインの要素に着目してみましょう。慣れない言葉だとは思いますが、難しく考える必要はありません。というのも、フィールインの要素は異世界トリップというお話と、とても相性がいいからです。
 例えばPCたちがダンジョンでアイテムを見つけたとしましょう。そのアイテムは「巻き付けてある紙を剥ぐと中から銀色に光る薄い膜が現れる。さらにその膜を剥ぐと、整然としたパターンの凹凸がある黒い板状の物体が現れる」と描写してみましょう。
 そのアイテムがなんなのか、この情報だけでは分かりませんよね?
 しかし続けて「その板を持って見ると、硬い……と思ったらドロリと溶けて、手についた」、「手についた黒ずんだものから甘い香りが漂ってくる。思わず舐めてしまうと、苦みと甘みが口の中一杯に広がる」、などと描写するとプレイヤーはその正体が板チョコだと気付くでしょう。
 このように描写の仕方でフィールインの発生する状況は容易に起こせます。現代地球の知識を活かすのとは逆に、弱いエネミーを怖そうに描写することで同じようにフィールインを起こせるでしょう。
 そのように考え出すと、異世界トリップというお話は、フィールインの宝庫に思えてくるかと思います。

●実例を挙げてみる
 より具体的なフィールインの例として、『アリアンロッドRPG2E
 スーパーシナリオサポートVol,1 妖魔と戦車とアーシアン』に掲載されている「奇妙な訪問者」というシナリオが参考になります。
 せっかくですからネタバレにならない範囲でシナリオの概要を説明しておきましょう。
 PCたちは、ある町にいるというアーシアンについて調査を依頼されます。その町では以前町長がアーシアンに助けられたことがあり、恩義からアーシアンに親切にしてくれるそうなのです。ところが、最近やってきたアーシアンがどうも怪しい。そこで彼らについて調べてほしい、というのです。
 PCたちが調査すると、そのアーシアンたちの挙動があからさまにおかしいことがわかるのですが、それには理由があって……という具合に謎が連鎖するようなシナリオになっています。
 もしまだ未読であるというGMは、ぜひ参考にしてみてください。

◎メタフィクション
 本来のメタフィクションは、例えば小説の登場人物がその中で小説について論じているというような、多重構造を指す言葉です。
 しかし、この記事では言葉の範囲を広げて、例えばパロディやオマージュなどもメタフィクションの一種として扱います。というのも、PCは知らなくてもプレイヤーが知っていて面白い話があります。これをメタフィクションとして考えることでシナリオの発想の幅を広げることができるからです。
 元よりPCとプレイヤーという二重構造になっているTRPGはメタフィクション要素を抜きにはできないわけですが、ファンタジー世界に現代地球人が行くというタイプのお話は、一層相性がよいのです。

●フィールインとメタフィクション
 例えば前述の「黒い板状のもの」の描写などはプレイヤーの知識があり、かつそれをアーシアンのPCが知っているということでお話が成立します。
 この時点でメタフィクション構造を持っているわけです。
 例えば、PCが「謎解きに失敗すると死亡してしまい、何度もある時点に戻ってしまう」という状況に置かれたとしましょう。これは正解当てのチャンスを持てるという点でフィールインに向いた設定ですが、それを「コンピュータRPGのセーブポイントのようなもの」とPCが理解するならばそれはメタフィクション要素も併せて持っていることになります。

◎アイディアをまとめる
 さて、ここまで“異世界トリップもの”のシナリオの発想方法について解説してきました。
 次のステップとして、発想のまとめ方について説明しようと思います。

■具体例で考える
 発想のまとめ方を説明するために、先ほど表を振って決めた「経営者のわたしたちが美味しいものを食べたら、優しい将軍になったそうです」を使って考えてみましょう。
 ところで、先に「『AR2E』は、ダンジョンなどと呼ばれる障害を突破していくゲーム」と書きましたが憶えておられるでしょうか?
 つまり『AR2E』の場合は最終的にダンジョンのような障害を突破するようなシナリオに仕立てれば、ゲームとして成立するのです。
 もちろんダンジョン以外にももっと様々な選択肢はありますが、逆に選択の幅が広すぎてもまとめるのが難しいので、とりあえずゴールをダンジョンシナリオに設定しましょう。

●逆算して考える
 こういう場合、お話の頭の方から決めていく方法と結末から逆算する方法があります。ここでは逆算で構成を組み立てることにします。つまり、「優しい将軍になった」という結末をどう迎えるかを考えるのです。
 まず、「優しい将軍」とはなんでしょう?
 戦争に弱い将軍?
 あるいは可愛らしい少女とかお婆さんのように外見が優しい将軍?
 様々なアイディアが湧いてきそうですが、ここでは「民に優しく、兵に公平」な将軍、ということにしましょう。
 次に、「PCがどうやってそんな将軍になるのか」ですが、ここは思い切ってシナリオハンドアウトにそう書いてしまいましょう。ハンドアウトに書いて、プレイヤーがそれを選択してくれれば「優しい将軍」の出来上がりです。
 次にその「優しい将軍」がどのようにダンジョンを突破するシナリオに仕立てるかということになります。
「民に優しく、兵に公平な将軍」は、いかにも悪い同僚や上司に嫌われていそうですね。
 そこで、悪い上司ににらまれてしまい、無実の罪(反逆とか、虐殺とか)を被せられ、しかも人質を取られたために身の潔白を証明すべくダンジョンを突破せねばならない、という展開なんてどうでしょうか?
 なんとかダンジョンシナリオに持ち込めそうですね?

●前の方を詰めてみる
 次に、アーシアンであることを活かすにはどうしたらいいでしょう?
 そろそろ前半の「経営者のわたしたちが美味しいものを食べた」を使ってみましょう。
 PCのアーシアンが現代地球で経営者だったことにするのは、シナリオハンドアウトや今回予告に書くことで実現できます。
 問題は「わたしたち」の部分です。PC全員が元から知り合いで、例えば「商店街の店主たちだった」なんて設定にもできます。
 さすがにこれは縛りすぎかなと思ったら、PCのうちふたり以上のハンドアウトに「経営者だった」と書いて、設定をプレイヤーに任せるという考え方もあります。
 一概にどちらがいいとはいえないのですが、迷うようであれば取りあえずプレイヤーに任せる方向にして他の部分を詰めていくことができます。
 次に、「美味しいもの」ってなんでしょう?
 経営者であれば美味しいものを食べること自体は不自然ではないでしょう。問題は、なぜそれを食べると優しい将軍になれるかです。
 食べると優しい将軍になれる美味しいもの……そんな不思議な食べ物はなにか魔法的なものかもしれませんね。
 では、PCが転生して現代地球からエリンに来る間に神様から使命を授かるさいに神様のご飯を食べてしまったというのはどうでしょう?
 もしもPCが「つい美味しそうで手を出してしまった」ことにするならそのことはハンドアウトに書いておく必要があります。
 そこまで指定したくないという場合は神様から勧められた方がよいでしょう。ただし、PCが疑って美味しいものを食べてくれないかもしれません。その場合は神様のご飯について効能を説明するなどしてプレイヤーを促す必要があります。
 優しくなる効能は、民衆の支持率みたいな数値をシナリオ内ルールで設定してそれが高いほど戦闘能力が上がったり、兵士の士気が上がるなんていう手はありますね。いわゆる「チート」表現です。
 この辺も、「そこまでGMが決めなくてもいいだろう」と判断するなら、特に設定をしなくてもかまいません。その場合、シナリオタイトルから「優しい」を抜けばすむだけですから。

●前後をまとめてみる
 それではシチュエーションをまとめてみましょう。
 PCたちは現代地球で経営者をしていました。ところが何かの切っ掛けで、集団でエリンに召喚または転生することになりました。
 そのとき、神様の美味しい食事を食べたことにより、将軍としての「チート」能力を授かってしまいます。
 エリンにやってきたPCたちはチートの力で将軍として頭角を表しました。
 ところが、PCたち優しい将軍を快く思っていない軍務大臣がPCたちに虐殺の罪をきせます。放置すると民の支持が下がりPCたちが弱体化してしまいます。
 ここまでがオープニングフェイズ、またはミドルフェイズの出だしくらいまでに展開する範囲です。
 そして、身の潔白を証明するために「審判の迷宮」と呼ばれるダンジョンを攻略するように言われます。もちろん、悪い軍務大臣は罠を仕掛けており、PCはその罠を潜り抜けながら、身の潔白を証明します。
 最後は、軍務大臣の放った刺客を返り討ちにするという終わり方もありますし、逆に軍務大臣の罪を暴いて退治するという結末もありでしょう。
 シナリオが単発なのか、それとも連続するのかなどの状況によって、採るべき結末が変わってくるでしょう。
 どうでしょう。あとはダンジョンの配置を決めて個々のデータを置いていけば、遊べるシナリオにはなるのではないでしょうか?

■別のお話を考えてみる
 それではここから「経営者のわたしたちが美味しいものを食べたら、優しい将軍になったそうです」というタイトルから全く別のお話を考えてみましょう。
 現代地球でいわゆるブラック企業の経営者だったPCたちは、エリンに転生しチューシのNPCが作ったご飯を食べ幸せな気持ちになりました。そして、生前の行ないを反省して和風鉄板料理の店“将軍”をオープンさせました。もちろん従業員に優しいお店です。
 ところが、その店を快く思わない他店から妨害され、お店がピンチになってしまいます。王様の主催する料理大会で優勝し、店を救うためPCたちは希少な食材が手に入るダンジョンに挑むことになりました。
 どうでしょう?
 こういうお話でもシナリオになりますよね。


●ミスマッチは色々使える
 このお話のポイントは将軍という言葉をあえて普通は結びつかない料理店とくっつけたことです。ミスマッチを狙ったわけですね。
 ミスマッチ、フィールイン、メタフィクションという考え方は、お話の全体像を組み立てるだけでなく、より具体的に細部を作っていくさいにも役立つのです。
 最終的に「ダンジョンに行く」というゴールにさえ結びつけば、その途中はいくらでも展開を考えるくらいに考えちゃってもいいかと思います。
 というわけで、「ダンジョンに行く理由決定表」を作ってみました(P13参照)。
 タイトルと、この表の結果の間を埋めれば『AR2E』のシナリオとして遊べるものができあがるでしょう。

◎最後に
 恐らく、ここまで記事を読んでぼんやりとシナリオを作り上げるために何をすればよいかが分かってきたものの、いざ作ろうとすると考え込んでしまう、という人もいるかと思います。
 そういう人は、とにかく数をこなすことをお薦めします。
 シナリオタイトル決定表とダンジョンに行く理由決定表を組み合わせて、「こんな感じの話」というシナリオのアイディアを作り、どんどん貯めていくのです。
 そして、いざGMをする必要ができたときなどに、作りためたシナリオのアイディアを見返してみましょう。もしかすると、その時になって「ピン!」とくるものが見つかるかもしれません。
 この辺は異世界トリップもののシナリオに限らず、TRPGのシナリオ作成一般に通用するコツだと思います。

●理由
 最後の方にもちょっと書きましたが、実は今回紹介した手法は異世界トリップもの以外にも応用が利きます。
 その上で、TRPGのシナリオを作るさい異世界トリップものというジャンルはかなり作りやすい、相性がいいことも分かっていただけたかと思います。
 冒頭部分に書いた「なんのための特集か」の答えですが、それは「異世界トリップものをもっと楽しもう」ということになります。そのために、異世界トリップものがどんな風にできているかを紹介する目的でこの記事を冒頭に置いたのです。
 この後に載っている記事を読みながら「なるほどなあ」と思ってもらえると、この記事は役割を果たしたことになるでしょう。
〈了〉